ビジネス誌などで発表される「女性社員が活躍する企業ランキング」で、
常に上位にランキングされる資生堂
いったいなぜ、資生堂では女性社員が輝いているのだろうか?
その謎を解明し、自社の職場づくりに活かすため
コカ・コーラ社社員が資生堂を訪問しました。


文=山田清機
写真=村上悦子


《対談者プロフィール》
本多由紀さん(写真 左)/株式会社資生堂 国内事業人事グループリーダー(GL)。1989年4月資生堂入社。大阪中央販社(デパート)、福岡支社で営業を担当。2001年4月本社経営企画室“店頭基点”の経営改革プロジェクトなどを担当。03年に第1子出産。04年4月に復職。CSR部および人事部で女性活躍促進などを担当。10年第2子出産。12年4月復職、14年4月より現職。GLとして国内化粧品事業の人事課題の解決にあたっている。

清田美佐子さん(写真 右)/日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング&ニュービジネス グローバルライセンシングマネージャー。米国にて大学卒業後、ザ コカ・コーラカンパニー米国本社ライセンス事業部にて、さまざまなパートナーとコラボレーションをするなど、コカ・コーラのブランディングを担う。現在は日本を含むアジアパシフィック地域のライセンス・ビジネスを統括。プライベートでは、2005年の結婚を機にコカ・コーラ社を退職し、ニューヨークへ移住。長女を出産後、07年に家族共々帰国、約3年のブランクを経て現職に復職。現在は8歳になる娘と夫と3人で東京在住。


辞めたくない人が辞めなくてもすむ状況づくり

清田 今日は女性が活躍しやすい組織や環境について、資生堂本多さんにお話を伺いたいと思っております。最初に私の自己紹介をいたしますと、私は飲料以外のライセンス・ビジネスという仕事を日本コカ・コーラ社で担当しておりまして、8歳の女の子の母親でもあります。

本多 飲料以外ですか?

清田 そうなんです。たとえばこれは(持参したグラスを見せる)、ワイングラスのメーカーとして有名なリーデル社と共同開発したコカ・コーラを飲むためのグラスなのですが、リーデル社が清涼飲料のグラスをつくったのはこれが初めてなんですよ。よろしかったら、どうぞ。

本多 まぁ、ありがとうございます。私も自己紹介をしますと、平成元年(1989年)、各社が雇用機会均等法の施行を受けて女性の総合職採用をスタートさせた時期に資生堂初の総合職として入社しました。大阪で2年、福岡で10年、当時としては珍しい女性の営業職として活動しました。2001年に本社に転勤して社長直轄の経営改革プロジェクトに紅一点で参加することになりまして、その後はCSR部や人事部で女性の活躍を推進する仕事を担当してきました。43歳で第2子を産んだので、社内では「中高年の星」と呼ばれています(笑)。
コカ・コーラ社社員、資生堂社員に
「女性社員が活躍する“ハッピーな”職場づくり」を学びにいく
資生堂 本多さん


清田 実は私、米国の大学を卒業してそのまま米国のコカ・コーラ社に勤めていたのですが、日本に転勤になって、その後結婚をして、一度退社しているのです。私自身、「結婚をしたら仕事は辞めるもの」という意識を持っていたからです。

本多 よくわかります。資生堂では女性が活躍できる職場環境になるまでのステージを3段階に分けて考えています。第1段階は「子供を産んだら会社をやめるのが当然」という状況、第2段階は「子供を産んでも仕事を続けることができる」という状況、第3段階は「男女ともにキャリアアップを目指せる、やりがいのある会社」です。まずは第1段階から第2段階へと引き上げるのが、最初の課題でした。

清田 引き上げるために、どのようなことをなさったのですか。

本多 産休、育休、時短勤務などの制度や事業所内保育所の設置といったインフラ整備をしました。社内にこのようなインフラがない時代は、たまたま両親と同居していたなどの「幸運な人」だけが仕事を続けられたわけですが、育児を支援する制度を拡充することによって、まずは「辞めたくない人が辞めなくてもすむ」状況をつくっていったのです。
コカ・コーラ社社員、資生堂社員に
「女性社員が活躍する“ハッピーな”職場づくり」を学びにいく
首都圏に勤務する資生堂の子育て社員の
「仕事」と「育児」の両立支援の一環としてオープンした
事業所内保育所「カンガルーム汐留」


「時短社員」の後ろめたさを払拭する方法

清田 私は一度退職して子供を産んだ後に復職したのですが、たまたま復職のタイミングで自宅近くに新設された保育園に娘を入園させることができたので、とても幸運でした。ただ私には「会社のコストになりたくない」という思いがとても強くありましたから、最初は勤務時間の短い契約社員として復職させてもらったのです。私のように、職場復帰にとても不安を感じている新米ママは多いと思いますね。
コカ・コーラ社社員、資生堂社員に
「女性社員が活躍する“ハッピーな”職場づくり」を学びにいく
日本コカ・コーラ 清田さん


本多 その「職場に迷惑をかけたくない」という気持ちは、時短勤務をしている女性の多くが抱えるものなのですが、その気持ちこそ、「男女ともにキャリアアップを目指せる、やりがいのある会社」という第3段階に向かうための最大の壁なんです。

清田 どういうことでしょうか。