ブレックファスト・クラブ』(1985年)のワンシーンから
コカ・コーラ」缶を前にするモリー・リングウォルド

 

いつの時代も「コカ・コーラ」は、「映画」や「音楽」や「スポーツ」とともにありました。その模様を記録した『Coca-Cola: Film, Music and Sports』という写真集がありますが、同書の序文で映画監督のリドリー・スコットは、映画界での「コカ・コーラ」の存在意義について、次のように述べています。「映画『キングコング』では広告看板がタイムズスクエアに掲示され、映画『俺たちに明日はない』ではウォーレン・ビーティーがそのさわやかな味を楽しんでいます。映画界での『コカ・コーラ』の存在感は、とても大きいのです」。

スコットの監督作品である1982年公開のSF大作『ブレードランナー』にも、「コカ・コーラ」のネオンサインが登場しています。「そこには、遠い未来の荒廃した世界でも、『コカ・コーラ』は生き続けているに違いないというメッセージを込めたのです」(スコット)。

コカ・コーラ」はサイレント映画の時代から、ハリウッドの黄金時代を経て現在に至るまで、ありとあらゆるジャンルの映画に小道具……いえ、名脇役として登場してきました。今回は、100年以上にわたるその軌跡を振り返ってみましょう。

文=ジェイ・モイエ

 

■「コカ・コーラ」が映画に登場する理由=「そこにあるから」

コカ・コーラ」はアメリカ文化の象徴的な存在であり、ポップカルチャー界の定番アイテムでもあります。だから、映画の脚本や撮影セットに登場するようになったのは、ごく自然な流れでした。「コカ・コーラ」が登場する映画とシーンの長大なリストを作成した映画研究家のオードリー・クプファーバーグは、次のように解説します。
「『コカ・コーラ』の広告や自動販売機やクーラーボックスが背景に置かれていたり、登場人物が『コカ・コーラ』について話したり、『コカ・コーラ』を飲んだりと、作品内での使われ方は実にさまざまです」

クプファーバーグが、夫であり仕事上のパートナーでもあるロブ・エーデルマンとともに調べたところ、「コカ・コーラ」が登場した史上初の映画は、1916年公開のサイレント映画『The Mystery of the Leaping Fish』だということが判明しました。カルト的な人気を誇ったこのコメディ作品では、主役のダグラス・フェアバンクスがカリフォルニアの高速道路を運転中、「コカ・コーラ」の広告看板の横を通り過ぎます。

「『コカ・コーラ』が本作に登場した理由は明快です。それがアメリカの風景の一部を構成しているからに他なりません。『コカ・コーラ』がこれほど多くの映画に登場する理由を示す絶好の例であるとも言えるでしょう」。似たようなシーンを含む多くの映画作品を列挙しつつ、クプファーバーグは解説します。

猿の惑星』(1968年)の撮影中に休憩するキャスト。
手には「コカ・コーラ」のボトル

 

■その時代の空気を伝える役割

ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)でヘリテージ・コミュニケーションズ担当ディレクターを務めるテッド・ライアンは、次のように述べています。
「映画の製作者たちは、『コカ・コーラ』こそ、映画の各シーンに欠かせない存在だと考えました。たとえば、『素晴らしき哉、人生!』(1946年)の中でジェームズ・スチュアートが街中を駆け抜ける際に背景に映るアイテムとして、『コカ・コーラ』の広告看板以上にふさわしいものがあるでしょうか?」

エーデルマンによると、第二次世界大戦後につくられた映画は、特定の時代と場所、そしてそのとき流行していたブランドをかなり正確に再現するようになっています。彼のお気に入り作品の一つ『ボディ・アンド・ソウル』(1947年)には、1920~30年代のニューヨーク市マンハッタン区ロウアー・イーストサイドのキャンディ店が登場します。「店内の壁やウィンドウディスプレイに設置された『コカ・コーラ』広告から、当時の雰囲気が伝わってきます。製作者は時代設定に説得力を持たせるために、当時使われていた広告をシーンに入れることにしたんですね」(エーデルマン)。

映画館に「コカ・コーラ」自動販売機の設置を促す1952年の広告。
アカデミー賞の副賞として贈呈されるオスカー像がモチーフになっている
 

 

■映画史に残る名シーンにも“出演”

コカ・コーラ」が映画に姿を見せ始めたころ、ザ コカ・コーラ カンパニーは、基本的には製品の使用に積極的に関与はしませんでした。しかし、「コカ・コーラ」の登場機会を拡大させ、適切な形で使用してもらおうと方針を変更し、1960年代にはロサンゼルスにそのための事務所を設立しました(現在は、プレミア・エンタテインメントという企業がその役割を引き継いでいます)。たとえば、ハリウッドの撮影スタジオが年代物の「コカ・コーラ」ボトルや広告をリクエストしてきた場合、ロサンゼルス事務所のチームが時代設定と作品の雰囲気に適したアイテムを選んで提供する、というシステムができあがっていったのです。

その甲斐あってか、60年代以降の映画には、「コカ・コーラ」が極めて重要なシーンに登場することも増えました。『E.T.』(1982年)では、E.T.が「コカ・コーラ」の缶を開け、『スーパーマン』(1978年)では主人公が広告看板を突き破って飛んでいきます。『博士の異常な愛情』(1964年)には、自動販売機が登場していました。このように、映画ファンの脳裏に焼き付いた名シーンは枚挙にいとまがありません。

レースカードライバーを描いた『ラスト・アメリカン・ヒーロー』(1973年)から
コカ・コーラ」ロゴ入りのヘルメットを着用するジェフ・ブリッジス

 

もちろん、アメリカ以外の各国映画にも「コカ・コーラ」は数多く登場しています。「『コカ・コーラ』が世界的なブランドであることを忘れてはいけません。ジャン=リュック・ゴダール監督のフランス映画『勝手にしやがれ』(1959年)で、パリのカフェでジーン・セバーグが飲んでいるのはワインではなく、ボトル入りの『コカ・コーラ』ですしね」(クプファーバーグ)。

映画にそれぞれの時代のムードを添える“名脇役”として、さりげなく登場することの多い「コカ・コーラ」。先に挙げた作品以外にも無数の作品に登場していますから、どんな場面で使われているのか探してみるのも一興かもしれませんよ。