1998年の創業以来、常に東京のメンズファッションシーンを
牽引し続けてきたSOPH. CO.,LTD.(以下、SOPH.)。
SOPH.は、“都市生活者のための日常着”をコンセプトに、
時代が求めるアイテムを次々に投下し続けてきた。
2016年11月には「コカ・コーラ」とコラボレーションした
Coca-Cola | F.C.Real Bristolコレクションを発表したばかり。
創業18年目を迎えたいま、代表取締役社長の清永浩文さんが考えていることは何か。
胸中をうかがった。

文=松浦達也
写真=松本昇大

 

■変化を厭わない、だけど、軸はブレない

清永浩文さんが代表を務めるSOPH.は日本のファッションシーンのなかでは特異な存在だ。創業翌年の1999年には、“架空のサッカーチームのユニフォーム”という前代未聞のコンセプトで、《SOPH.》に次ぐ二つ目のブランド《F.C.Real Bristol》を立ち上げた。2002年に《SOPH.》のブランドネームを《SOPHNET.》へと改称したかと思えば、2008年には藤原ヒロシさんと手を組んで三つ目のブランド《uniform experiment》を立ち上げた。

ファッションとスポーツを融合させること自体が珍しかった時代に《F.C.Real Bristol》を立ち上げ、創業4年目には、知名度が高まった《SOPH.》というブランドネームをあっさり放棄した。かと思えば、他のトップブランドやアーティストとのコラボレーション、新ブランドの立ち上げなどにも意欲的に取り組んだ。ファッションブランドとしては異例とも言える事業展開を次々に打ち出し続けた。

「不遜なことを言えば、だからこそSOPH.は生き残ってきたと言えるかもしれません。同じことを続けていたら飽きられてしまうから、当然変化は必要です。ただ、変幻自在に見えるかもしれませんが、ブランドクリエイションの土台は僕自身が体験したことや感覚がベースになっている。その軸はブレていないつもりです」

東京を代表するブランドの成長の“軌跡”と“奇跡”。 「清永浩文さんとSOPH.の18年」

清永浩文さん。インタビューはSOPH.のオフィスで行われた

洋服が好きで、サッカーが好き。アートやインテリアデザイン、建築デザインも好き。そしてサプライズや気持ちのいい裏切りが大好き。もちろん他にも好きなものはあまたある。そもそも才人のパーソナリティとは一つのブランドに収まりきるものではない。

「たとえば《F.C.Real Bristol》の立ち上げには、1998 FIFA ワールドカップフランスを現地で観戦した体験が深く関わっています。FIFA ワールドカップの期間中、フランス国内は国代表のユニフォームやクラブチームのユニフォームなどのサッカーウェアを着た人であふれていました。でも当時の日本はまだ、クラブチームのユニフォームを街着にして歩くことは恥ずかしいと思われていたんです。そうであれば“着てみたい”と思えるような、カッコ良いユニフォームをつくっちゃえ! と(笑)。2002 FIFA ワールドカップ日韓に向けてサッカーを盛り上げるため、ファッションというフィールドからできることが、カッコ良さを追求したウェアをつくることだったんです」

モノに付加価値をつけるには物語が必要となる。そこで清永は《F.C.Real Bristol》という架空のサッカーチームのストーリーを構築し、ブランドイメージを膨らませた。「好き」が昂じて創設された架空のチームのウェアはまたたく間に若者の人気を獲得。2000年には《NIKE》がオフィシャルサプライヤーとして参画し、2016年までの間、実に16年間に渡り、ファッション界からフットボールカルチャーを盛り上げ続けた。

「時代の空気感を表現することは常に考えています。時代に流れる空気やカルチャーは体感していなければならないから、20歳代の頃は借金をしてでも服を買い、散財してました。実際、SOPH.を起業したのも、その借金が数百万円に膨れ上がり、『破産宣告一歩手前』の状態になってしまい、もう勝負する=起業するしかないところまで追い込まれたからなんです」

東京を代表するブランドの成長の“軌跡”と“奇跡”。 「清永浩文さんとSOPH.の18年」

オフィスには大きなサッカーグラウンドの写真が飾られていた。
清永さんのサッカーへの愛を感じる

 

■ジュンによるSOPH.全株式取得の真相

第1回目の《SOPH.》の展示会は1998年。知人の展示会スペースを間借りして行った。前述の通り、翌年発表した《F.C.Real Bristol》が大ブレイク。以来、多彩な展開とともにSOPH.は右肩上がりの成長を続け、年商はあっという間に20億円を超えた。そんな2013年5月、驚きの発表がなされる。国内大手アパレルメーカーのジュンがSOPH.の全株式と商標権を取得すると発表したのだ。

「実はその数年前から、今後SOPH.をどうしていくかずっと考えていたんです。なぜかというと、ファッションブランドの寿命はだいたい15年。1980~90年代に隆盛を誇ったDCブランド(*1980年代に日本国内でブームとなった衣服メーカーブランドの総称。DCとは、デザイナーズ&キャラクターズの略)でも、メンズラインだけの展開で15年以上続いているところはほとんどない。だから、創業15年を迎えるくらいまでに何らかの大きな一手を打たなければならないと考えていたんです。右肩上がりで業績がいいときにこそ、次の大きな展開に持ち込みたいという思いがあったんですね。実際、事業規模がある程度のスケールになってくると、独立系のブランドでは対応が難しいビジネスの話も増えてきます。後ろ盾をつけたほうがスムーズな場面も多いわけです」

過去、ファッション業界で独立系のブランドが大手に「買収される」のは、ブランドの凋落を想起させる事象でもあった。しかし、清永さんが考えたのは、ブランドが次のステージに行くためのポジティブな売却だった。そもそもIT業界などに象徴されるように、大手によるベンチャー企業の買収やM&Aは決してネガティブな事象ではない。むしろ企業に価値があるからこそ浮上する事案なのだが、日本のファッション業界ではまだそうした事例は多くはなかった。

「後進のためにも、好調なときにM&Aするという良い前例をつくりたかったんです。実際ジュンの傘下に入ってみたら出店に活かせそうな精度の高い物件情報がすごく取りやすくなるなど、大企業の経営資源を有効活用することが多くなりました。結果として売り上げも、M&A後3年で150%に伸びました。ジュンの人にも『もう(ジュンは)元取りましたよね』って言ってます(笑)。実は僕、社長として経営の矢面に立つよりも、裏方や黒子的な二番手仕事が好きなんですよ。吸収合併されたことで財務に関わることから開放されて、クリエイションに集中できるようになったのは本当に大きいですね」

東京を代表するブランドの成長の“軌跡”と“奇跡”。 「清永浩文さんとSOPH.の18年」

「身体の半分が『コカ・コーラ』でできているかも(笑)」と語る清永さん。
自宅の冷蔵庫には「コカ・コーラ ゼロ」が常備されているという

それにしても、だ。ファッション受難の時代と言われるいま、なぜSOPH.だけが20年近くに渡り、右肩上がりの成長を続けられるのか。

「その質問には『分かんないんだよね』と答えてます(笑)。ただ、立ち上げの時点でブランドもショップもコンセプトをがっつりつくり込んだというのは大きいかもしれません。おかげさまで、年を経ることで価値がすり減るのではなく、味が出てきたという面がありますから。実際、外苑前の《SOPH.》の直営1号店(SOPH.TOKYO)は17周年を迎えたけど、一度も改装したことがありません。海外も含めた全18店舗もそうです。人からは『《SOPH.》にはスポーツラインがあっていいですね』とも言われますよね。確かに、ファッションにスポーツを取り込んだのは世界的に見ても早かったし、いまは、スポーツとファッションのミックスが流行だから、その強みはあるのかもしれない」

 

■「コカ・コーラ」とのコラボアイテム発表!

11月2日には、SOPH.TOKYO17周年記念にあわせて、Coca-Cola | F.C. Real Bristolコレクションが発売された。今回のカプセルコレクションでは、《F.C.Real Bristol》という架空のクラブチームを「コカ・コーラ」がスポンサードしているという設定で「コカ・コーラ」ロゴやコカ・コーラ社のアーカイブグラフィックを落とし込んだユニフォームやトレーニングウェアなど計17アイテムが展開されている。

東京を代表するブランドの成長の“軌跡”と“奇跡”。 「清永浩文さんとSOPH.の18年」

サッカーファンでなくとも欲しくなるアイテムばかりの
Coca-Cola | F.C. Real Bristolコレクション

東京を代表するブランドの成長の“軌跡”と“奇跡”。 「清永浩文さんとSOPH.の18年」

表はシンプルだが、裏はカラフルなグラフィックがデザインされた
リバーシブル仕様の「REVERSIBLE TOUR JACKET」

「サッカー界にとって『コカ・コーラ』は特別な存在です。Jリーグのスポンサーを2015年まで務められましたし、いくつかのクラブチームのスポンサーとしてもチームを支えておられる。実際、SOPH.が1999年からスポンサードしている大分トリニータのスポンサーも引き受けてくださっていますし、もちろん、FIFA ワールドカップの公式スポンサーでもあります。ずっと何かご一緒できたらと思っていましたので、今回のコラボレーションには本当に感激しています。アニバーサリーは、新しいものやいつもと違う価値をお客様に見せる祭りのようなもの。清涼飲料でありながら、カルチャーやグラフィックのアイコンでもある『コカ・コーラ』とのコラボは、我々自身も楽しめる大きな祭りなんです」

ちなみに今回の17アイテムのなかで、とりわけ印象深いものは?

「これ(MIRROR TEE)ですね。企業の顔、それも『コカ・コーラ』のロゴを反転させるなんてよくOKを出してくれたと思います。こちらから提案しておいてアレですけど(笑)」

東京を代表するブランドの成長の“軌跡”と“奇跡”。 「清永浩文さんとSOPH.の18年」

「MIRROR TEE」は、鏡に映すと正しい「コカ・コーラ」ロゴになる

座右の銘は、「美しく勝利せよ」。1970年代、サッカーオランダ代表の司令塔だったヨハン・クライフの言葉だ。清永さんにとって、ファッションデザインが評価されるだけでも、ビジネスで成功するだけでも意味はない。「美しさ」と「勝利」はどちらも必要だ。アニバーサリーのコラボアイテムは、例年ファッション性への評価も高く、あっという間に完売となる。今回のコラボレーションでも、清永さんは、美しく勝利するつもりだ

 

東京を代表するブランドの成長の“軌跡”と“奇跡”。 「清永浩文さんとSOPH.の18年」

きよなが・ひろふみ / SOPH. CO.,LTD.代表取締役社長。《A.P.C.》の販売員を経て1998年《SOPH.》ブランドを立ち上げる。翌99年に立ち上げたフットボールラインのコンセプトブランド《F.C.Real Bristol》がブレイク。2002年にはブランド名を《SOPH.》から《SOPHNET.》へと改称。13年全株式と商標権をジュンに売却したが企業としてのSOPH.の体制はそのまま社長業も継続する。「もともと《A.P.C.》もジュン傘下だったし、佐々木進さん(ジュン代表取締役社長/SOPH.代表取締役会長)は当時から“東京の兄貴”みたいな存在でしたから」とその関係はすこぶる良好。
SOPH. www.soph.net

 

Coca-Cola | F.C. Real Bristolコレクションは、現在全アイテム完売しております。