文=ジェイ・モイ

「宇宙にビデオカメラを飛ばしたい!」

コカ・コーラ」はずいぶん昔から何度も宇宙旅行へと旅立っていますが、数ヵ月前、気象観測気球を使った宇宙旅行に初めてチャレンジしました。
この実験に関わったのは、サウスウェスト・アトランタ・クリスチャン・アカデミーの科学工学クラブ。同クラブは、2014年5月、「コカ・コーラ」の缶を大気圏に打ち上げ、その映像をYouTubeに投稿するという実験を行ったのです。もともとサウスウェスト・アトランタ・クリスチャン・アカデミーは、スポーツの強豪校としてジョージア州中にその名をとどろかせていますが、学業や研究分野の成果についてもアピールしようとしたのでしょう。
学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space
実験に関わったアカデミーの生徒たち

「『宇宙にカメラを飛ばしたい』と生徒たちから相談を受けたとき、すぐに自分もその実験に参加しようと思いました」と話すのは、今回の実験で中心的役割を担ったテッド・ネイル(Ted Neill)氏。彼は、ジョージア州立大学のMBAコースに在籍、ボランティアで同アカデミーのAPイングリッシュの準講師をしていますが、元CARE USAの社員であったことと、多くのアメリカ合衆国国内の経済学者がSTEM(科学、技術、工学、数学)教育の重要性を強調するのを耳にしていたこともあり、この実験に関心を持ったのです。
ネイル氏は中学・高校の生徒5人と毎週のように集まって計画を練り、1年間かけてカプセルを設計・製作しました。そしてメンバーは、インターネット上でクラウドファンディング・キャンペーンを立ち上げ、800ドルの資金を集めることに成功します。たとえ1号機が打ち上げに失敗したとしても、再チャレンジするのに十分な金額でした。

145㎞離れた地で発見されたカプセル

「スペース・カプセル」は、発泡スチロールの箱を使用してつくられました。そして箱の中に、GPS機能付きの携帯電話を入れ、氷点下の気温から守るために魔法瓶も利用しました。さらに、定規と細長いプレキシガラスに「コカ・コーラ」の缶を固定し、その缶にデジタルビデオカメラを向けて取り付けました(このようにすることで、『コカ・コーラ』の缶が空を飛んでいるような映像が撮れる)。
ちなみに今回の宇宙旅行は、カプセルが最高高度10万フィート(約30km)に到達した段階でヘリウム入りの気象観測気球が破れてパラシュートが開き、地球まで落ちて戻ってくるという計画でした。
打ち上げ直後はすべて順調に進んでいるように見えました。気球はぐんぐんと上昇し、ついには、雲の上に姿を消したからです。ところが、GPS装置が途中で作動しなくなったため、カプセルの位置を追跡できなくなってしまいました。そのまま数週間はカプセルの居所がつかめず、メンバーたちは消失してしまったのだと思っていました。
「その頃、生徒たちはとても落ち込んでいました」とネイル氏は語ります。
ところが、メンバーが2号機発射の準備をしていた同年8月、ネイル氏のもとにある男性から1本の電話が入りました。その男性は、打ち上げ地点から90マイル(約145km)ほど東に位置するジョージア州オグルソープの農場で、カプセルを見つけたというのです。カプセルはぼろぼろで破れているが、カメラは無傷だということ、そして、返送したいということをその男性から告げられました。
すぐさま小包はメンバーの元へと送られたわけですが、ここでトラブルが発生します。ジョージア州ダルースの郵便局で、カプセルの入った小包が不審物と見なされたのです。
「連邦捜査官から問い合わせの電話があり、小包の中身は気象観測気球だと説明しなければなりませんでした。そして、すぐに受け取りにくるようにと言われたのです」
ネイル氏が到着するまで、小包は郵便局員たちを怖がらせていたようです。数人の郵便局員に肩ごしにまじまじと見つめられる中、ネイル氏は到着すると、すぐさまカメラからチップを取り出し、ノートパソコンに挿入しました。映像は無事に再生できました。そしてビデオは、旅のすべてを記録していたのです。
学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space
ビデオカメラに記録されていた「コカ・コーラの缶の宇宙旅行」の映像

映像を確認できたとき、その場の全員が、ほっとしてため息をつきました。
「小包を手元から離すことができて、局員の方々は喜んでいました。とても心配させてしまいましたよ」とネイル氏は笑いながら言います。
数日後、メンバーの生徒たちは映像を見て大興奮、教師たちはそれ以上の興奮っぷりでした。
サウスウェスト・アトランタ・クリスチャン・アカデミーのパトリス・フランシス(Patrice Francis)校長は、こう振り返ります。
「そのときの様子をお見せしたかったくらいです。映像の公開は職員会議の最中に行ったのですが、みな興奮して『もっとよく見えるようにコンピューターを近くに寄せてくれ』と言い合っていたくらいです」
学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space

学生たちの夢を乗せ、
「コカ・コーラ」の缶、宇宙へ飛び立つ
Atlanta Students Send Coke Can to Space
回収された実験用カプセル(写真上、中)と
記録された映像を確認し、興奮を隠しきれないアカデミーの生徒たち

今月、編集された映像がインターネット上に投稿され、すでに10,000回近く(2014年11月6日現在)再生されています。今回の同アカデミーの科学分野の実験は、たまたま成功したわけではなく、最近の一連のSTEM教育関連の実績が積み重なった成果だとフランシス校長は強調します。実際、サウスウェスト・アトランタ・クリスチャン・アカデミーは2014年初めに、第1回Georgia STEM Dayを主催し、その後も地元のロボットコンテストなども積極的に行うことで注目を集めてきたのです。
さらに校長は、このように続けます。
「生徒が刺激を受け、やる気を持ち続け、限りない想像力を生かしてチャレンジできるような機会そのものに、私たちはいつもワクワクしています。今回のように、宇宙に『コカ・コーラ』の缶を飛ばした事例は、何事にも可能性に限界はないということを証明したことと思います」