日本のコカ・コーラシステム(*1)では、使用済みPETボトルを新品のPETボトルに生まれ変わらせる、「ボトルtoボトル」リサイクルに力を入れています。これには、飲み残しや異物混入のないきれいなPETボトルを回収することが求められますが、街の回収ボックスでは、PETボトル以外のごみが捨てられてしまったりと、リサイクルの弊害になってしまう事例が後を立たないのが現状。こうした問題を解決するための第一歩として、まずは日本コカ・コーラの社内で「ボトルtoボトル」リサイクルを徹底しようという動きが生まれ、新機能を搭載した空容器回収ボックスが、2月20日より社内に設置されました。従来の回収ボックスから何が進化したのか? そして、このマシーンにより、どのような変化が期待されるのでしょうか?

*1 コカ・コーラシステム……日本のコカ・コーラシステムは、原液の供給と、製品の企画開発・マーケティングを担う日本コカ・コーラと、製品の製造・販売を担うボトラー社や関連会社などで構成される。日本コカ・コーラは、ザ コカ・コーラ カンパニー(本社:米国ジョージア州アトランタ)の日本法人。

文=『Coca-Cola Journey』編集部
写真=村上悦子

 

■家庭から出たPETボトルの行方

回収されたPETボトルが、どのような工程を経てリサイクルされ、新たな姿に生まれ変わるか。その全貌を知る人は少ないでしょう。

家庭から出される使用済みPETボトルは、自治体によって分別収集され、選別された後、ベール(*2)梱包といった中間処理を経て、「フレーク」(*3)「ペレット」(*4)と呼ばれる、再生PET原料へと変貌を遂げます。再製品化をする事業者は、そのフレークやペレットを原料として、繊維製品やシート製品、成形品などのリサイクル製品を製造するのです。

また、飲料用PETボトル用樹脂に戻すこともあります。つまり、“ボトル”から “ボトル”を生み出すのです。この方式をその名の通り「ボトルtoボトル」と呼びます。

日本のリサイクル技術はすでに世界的にも高いレベルを維持していますが、この「ボトル to ボトル」を実現するためには、それにも増して高度な処理技術が必要です。再生前と同品質のPETボトルを製造する際、異物混入や飲み残しなどがあるとリサイクルPETの品質が落ちてしまうため、リサイクルの工程でそれらを完全に除去しなければならないからです。

高い処理技術を要するものの、環境に配慮したリサイクルモデルとして、現在「ボトルtoボトル」は各企業で採用の動きが高まっています。日本コカ・コーラでも、この「ボトルtoボトル」を推進するほか、植物由来の「プラントボトルTM」を開発するなど、プラスチックのリサイクルに関する技術開発に日夜取り組んでいます。そして、環境負荷のさらなる軽減に向け、今回、既存のリサイクルスキームそのものを見直すことになったのです。

*2 ベール……回収したPETボトルを圧縮し、梱包した立方体の状態のもの。
*3 フレーク……PETボトルを約8mm角に裁断したもの。
*4 ペレット……フレークをさらに加熱融解し粒状にしたもの。

 

■きれいなPETボトルを効率的に低コストで回収するために

2月20日、日本コカ・コーラ社内に新たな空容器回収ボックスが導入されることになりました。その名は、「リバースベンディングマシーン(RVM)」。

そのPETボトルはどこへいく?──リサイクルスキームの透明化により「容器回収」にイノベーションを

2月20日、日本コカ・コーラに設置された「リバースベンディングマシーン(RVM)」

 

その導入に携わった技術本部の柴田勇人が、RVM導入の目的を説明します。

「『ベール』は、そこからどれだけのフレークを生み出せるかという『フレーク化率』によってグレードが決められます。そのフレーク化率は、回収されるPETボトルの質によって左右されます」

「ボトルtoボトル」を確実に実現するためには、「ベール」のグレードを上げること、つまり、異物が混入していないPETボトルを回収することが何よりも大事であり、RVMは「きれいなPETボトル」の回収に特化したマシーンなのです。

「残液があったり、ガラス瓶やアルミ缶を入れようとするとエラー表示になり、回収ができない仕組みになっています」

と説明するのは、技術本部の柴本健太郎。RVMの回収口に入れた空容器は自動運転であっという間にマシーンに取り込まれ、圧縮された状態で排出されました。

そのPETボトルはどこへいく?──リサイクルスキームの透明化により「容器回収」にイノベーションを

RVMで圧縮された空容器

 

これなら、回収の段階で飲み残しや空容器以外の異物の混入を完全に防ぐことができます。ここで回収されたきれいなPETボトルを使えば、もっともグレードの高いベールを生み出すことが可能になり、「ボトルtoボトル」リサイクルの促進につながることになるのです。

RVMにはさらなるメリットもあるといいます。人の手で潰すよりも小さくPETボトルを圧縮することができるため、回収時の体積がこれまでの3分の1程度にまで減容されるそう。その減容効果により、輸送で発生するCO2を3分の1に削減できるほか、リサイクル工場で選別を行う際の人件費の削減にもつながります。

 

■変化を起こすには、まず自社から

ところで、このRVMを自社に設置した意図は何なのでしょうか?

「コカ・コーラ社はグローバルで『廃棄物ゼロ社会(World Without Waste)』の実現を掲げていますが、社員全員がリサイクルに対する意識をさらに高め、毎日の行動に落とし込んでいく必要があると考えました」(柴田)

まさに、千里の道も一歩から。一人ひとりが意識を持って日々「リサイクル」に携わることで、日本コカ・コーラの社員の習慣が変化すれば、それは日本全国のコカ・コーラシステムに、さらには地域社会へと波及することになります。

「目的は、RVMを広範囲に設置することではありません。まず目指したのは、RVMの利用を通じて、ラベルを剥がす、キャップを取る、という適切な分別行動を体感してもらうこと。そして、なぜそうした一手間が必要なのか、なぜ減容化が必要なのかという、容器回収のその後のリサイクルスキームを社員に自分ごととして考えてもらうことでした」(柴本)

容器回収のその後──。実際、柴田はこのRVMを導入するにあたり、ある調査を実施しています。当社で回収した使用済みPETボトルが、最終的にどのような形に再生利用されるのか、そのリサイクル工程を徹底的に追跡したのです。その結果、当社から出されたPETボトルのうち、およそ30%に当たる量が、リサイクル後にどうなったか正確な行方が分からなくなっていることが判明したそうです。日本コカ・コーラでは、毎日約1,000本のPETボトルが消費されているので、そのうちの30%となると約300本。決して少ない数字ではありません。

このような不透明な状態を改善する必要がある、と考えた柴田は、まず、提携しているリサイクル工場を訪れ、回収したPETボトルと同等量を「ボトルtoボトル」の原料にすることが確実になるよう依頼しました。

「現況のリサイクルの仕組みですと、さまざまな仲介業者や商社などが間に入っているために、プロセスが何段階にも分かれています。この複雑なスキームを透明化し、徹底した環境負荷の軽減を目指すためには、今後、リサイクル工場をはじめ実際の現場に定期的に赴き、関わっている団体や企業との間で密にコミュニケーションをとっていくことも大切です」(柴田)

 

■業界の垣根を超えて広がりゆくイノベーションの輪

そのPETボトルはどこへいく?──リサイクルスキームの透明化により「容器回収」にイノベーションを

圧縮した空容器と、そのままの空容器の比較

 

自社内にこのRVMが設置されることで、早くも社内ではリサイクルにまつわる新たなプロジェクトについて、議論が持ち上がっているようです。

「一つ社内で意見が上がっているのは、RVMを使って教育のツールをつくりたい、ということですね。若い世代にレガシーを残すためには、正しいリサイクルの知識と方法を今から理解してもらうことが重要です。今後、RVMを組み込んだ教育ツールをパッケージにして、さまざまな教育機関と連携することもできるのでは、と思っています」(柴本)

その言葉の通り、これから「廃棄物ゼロ社会」を目指すためには、単独の企業だけではなく、産学の連携や、異業種間でのコミュニケーションが必要になってきます。双方に蓄積されているナレッジを交換することで、技術発展の相乗効果や、大きな拡散力を生み出すことを狙うのです。

「私の上司が常に言っているのは、『0を1にするのは難しいけれど、1になったら可能性は無限に広がる』ということ。今回の取り組みも、まさに、小さくとも現実を変えるための着実な一歩を踏み出した一例と考えております」(柴田)

日本コカ・コーラは飲料メーカーのリーディングカンパニーとしてだけでなく、容器回収・リサイクルのリーディングカンパニーとしても、今後ますます存在感を強めていくべく取り組みを進めていきます。その変化の兆しが、まずは日本コカ・コーラのオフィスに芽生えたようです。