日本のコカ・コーラシステム(*1)では、グローバルビジョン「廃棄物ゼロ社会(World Without Waste)」に基づき、2018年1月「容器の2030年ビジョン」を設定しました。今年7月には、従来の目標達成の前倒しを含む、新たな環境目標を発表(https://www.cocacola.co.jp/press-center/news-20190712-15)。「設計」「回収」「パートナー」の3本の柱を踏襲しつつ、数値目標と、それを達成する期限が具体的に設定されています。なぜアップデートしたのか? 実際に何をしていくのか? この詳細を紐解く10の質問に、日本コカ・コーラ技術本部の柴田充が答えます

*1 コカ・コーラシステム……日本のコカ・コーラシステムは、原液の供給と、製品の企画開発・マーケティングを担う日本コカ・コーラと、製品の製造・販売を担うボトラー社や関連会社などで構成される。日本コカ・コーラは、ザ コカ・コーラ カンパニー(本社:米国ジョージア州アトランタ)の日本法人。

文=『Coca-Cola Journey』編集部
写真=村上悦子
イラスト=藤井アキヒト

 

Q1 今回のアップデートでは、目標達成が早められ、目標値自体も大幅に上方修正されました。その理由は?

A1 「廃棄物ゼロ社会」の実現に向け、よりいっそうスピーディな対応が必要だと考えたからです。

社会全体の環境問題への関心の高まりを受け、日本のコカ・コーラシステムも飲料業界のリーディングカンパニーとして「廃棄物ゼロ社会」実現に向けての取り組みをますます推進し、お客様の期待に応えなければという使命感を持っています。

このリサイクルの取り組みには、技術的にクリアすべき課題や、素材となる使用済みPETボトルの調達状況など、複数の要素が複雑に関連し合っています。それらのすべての条件が整うメドが立って初めて、「この数値を実現する」と言えます。

現在の進捗と今後の進展見込みを慎重に突き合せた上で、もっとスピードを速め、また細かく期限を刻んだ数値を提示することが可能だと判断できました。それで発表に踏み切ったのが、今年7月のタイミングでした。

例えば、以前の「容器の2030年ビジョン」では、2030年の時点でPETボトルの原材料の平均50%以上を「リサイクルPET樹脂」または「植物由来PET樹脂」にすると掲げましたが、現時点での進行からこれは2022年までに実現できる見通しが立ちました。

「容器の2030年ビジョン」がアップデート。 何がどうなる? 10の質問で解き明かす!

日本コカ・コーラ
技術本部 労働安全衛生・環境サスティナビリティガバナンス部長
柴田充

 

Q2 日本のコカ・コーラシステムでは、回収したPETボトルを元にしたリサイクルPET樹脂で新しいPETボトルをつくる「ボトル to ボトル」という方法を推進しています。このようなPETボトルは安全・安心なのでしょうか?

A2 安全・安心です。新規PET樹脂とリサイクルPET樹脂のスペックに差はありません。

お客様に販売する製品に用いる以上、安全・安心であることは我々が絶対に守らなければならない点です。どの容器においても、私たちは食品衛生法に加え、日本のコカ・コーラシステム独自の品質基準を順守しています。

そもそもPETボトルの現在の主な原料は、
(1)新規化石燃料を用いたPET樹脂
(2)リサイクルPET樹脂
(3)植物由来PET樹脂

の3種類あります。(1)は、化石燃料から新規に製造することからバージンPET樹脂という言い方もします。

どの素材をどんな割合で使ってPETボトルをつくったとしても、守るべき基準は同じなんです。また、3つともスペックに差がないので、(2)の場合はより強度を増す必要がある、といった違いは生まれません。

「容器の2030年ビジョン」がアップデート。 何がどうなる? 10の質問で解き明かす!

「ボトルtoボトル」の仕組み

 

Q3 「ボトル to ボトル」の過程で生まれたリサイクルPET樹脂の使用率も、今回新たに明確な数値目標が設けられました。それは、どのように設定したのですか?

A3 リサイクルPET樹脂を活かせる最大限の割合(90%)を、2030年の目標としました。

回収したPETボトルを使う「ボトル to ボトル」の過程では、一般的な製造工程と同様、製造ロス等があり歩留まりが100%ということはないので、100%をリサイクル材にすることは難しいのです。100本のPETボトルから、100本はつくれない。私たちの計算では、今後の技術革新も織り込んで最大90%と算定し、2030年までに前述の(2)の利用を90%まで引き上げると掲げました。また、残りの10%は、(3)植物由来PET樹脂を使う計画です。つまり、(1)の新規石油由来の樹脂をゼロにします。

今、製品によって(2)や(3)の使用率はまちまちです。全製品の「ボトル to ボトル」の平均が、現状17%(2018年実績)。これを2022年に50%に引き上げ、90%への布石とします。同時に、今はまだ(1)のみで生産している製品もあるので、2025年までにはすべての製品に(2)または(3)を導入する計画です。

 

Q4 そもそも「ボトルtoボトル」90 %は具体的にはどうやって実現していくのですか?新たに工場をつくるなど?

A4 技術力の向上、工場の整備、使用済みPETボトル回収率の向上、などです。

冒頭でお話ししたように、この取り組みにはとてもたくさんの要素が複雑に絡み合っています。「ボトル to ボトル」90%への道のりに関しては、まず使用済みPETボトルの再生利用率を高めるために技術力の向上に努めています。併せて、今は先行して非炭酸の製品から「ボトル to ボトル」の割合を高めていますが、そうではない製品、まだ(2)や(3)を使えていない製品にも適用するための技術開発も進めています。

当然、再生材を使ったPETボトルを今よりも多く生産対応するための工場設備も解決すべき課題ですし、そもそも材料となる使用済みPETボトルの回収率も高める必要があります。そのための啓発活動も欠かせませんね。

 

Q5 「2030年までに、PET樹脂の使用量を35%(2004年比)削減」という目標が新たに加わりました。これはどういうことですか?

A5 1本のPETボトルに必要な樹脂の量自体を減らし、軽量化します。

先ほどまでの話は「再生材の割合を増やす」ことで、こちらは「必要な樹脂の量そのものを減らす」ことです。

例えば、1996年、日本コカ・コーラシステムの水製品用小型PETボトル(500ml)の重さは32gでしたが、2009年に発売された「い・ろ・は・す」で約12gまで軽量化しました。2011年から「い・ろ・は・す」の小型ボトルは555mlが導入されましたが、重さは変わっていません。技術の力で、品質を保持したまま、水製品は1996年から3分の1近くまで軽量化したんです。1本あたりに使う樹脂の量が減れば、限られた資源を有効活用できますよね。

「容器の2030年ビジョン」がアップデート。 何がどうなる? 10の質問で解き明かす!

軽量化をすると同僚の原料でより多くのPETボトルがつくれるようになり、
環境負荷が減る

ちなみに「2004年比」となっているのは、PETボトルの業界団体であるPETボトルリサイクル推進協議会がPETボトル軽量化を掲げた基準年が2004年だから。別途、私たちは独自に1980年代から容器の軽量化に取り組んできましたし、2004年比で35%減といっても2018年実績ですでに27%減らしているんですね。品質保持の機能を維持しながらの軽量化はかなりやり尽くしていますので、さらにここから8%を減らすのは至難の業ですが、実現を見据えて動いています。

 

Q6 PETボトル以外でも、「2025年までに日本国内で販売するすべての製品の容器をリサイクル可能な素材に変更する」と掲げています。現状でリサイクルできない素材を使った容器はあるのですか?

A6 パウチ製品ほか、数種類がリサイクルできていません。

「アクエリアス」や「Qoo」の一部製品に採用しているパウチの容器は、現時点ではリサイクルできていません。ゼリー状の飲料などに適しているのですが、容器の安全性や利便性の観点から、何層かの素材を薄く重ねて圧縮してつくっているんですね。PETボトルも缶も、粉砕したり溶かしたりして再生材にしていますが、基本的に単一の素材でないとリサイクルできないんです。

私たちは以前からこの課題の解決に取り組んできました。品質保持等の技術的なハードルは高いのですが、「廃棄物ゼロ社会」実現のため、引き続き研究開発を続けていきます。

「容器の2030年ビジョン」がアップデート。 何がどうなる? 10の質問で解き明かす!

2025年までに、日本国内で販売するすべての製品の容器を
リサイクル可能な素材へと変更する

 

Q7 「2030年までに、日本国内で販売した自社製品と“同等量”の容器を回収する」とありますが、同等量とはどういうことですか?

A7 日本のコカ・コーラシステムが販売した容器と“同じ重さ”の、他社製品含む容器を回収します。

製品がお客様の手に渡り、そこから自治体や、自販機横の空容器ボックスを経由して回収されるわけですが、その過程では日本のコカ・コーラシステムの製品だけでなく、いろんな他社さんの製品が混ざってきます。なので、販売した容器をそのまま回収するということではなく、それと同じ重量の分、世の中にある使用済み容器を回収することを掲げました。これが、“同等量”の意味するところです。

そもそも、グローバルで見据えている私たちのゴールは「廃棄物ゼロ社会」なので、自社製品の容器だけ回収できたらそれで良い、という考え方では意味がないですからね。

ただ、これが少し難しいのは、日本はリサイクルの意識が高いので、現時点で92%の使用済みPETボトルがリサイクルを目的として自治体や企業の回収ボックスに出されているんです。さらに可燃ごみなどからの回収も含めると、私たちの推定では少なくとも98%が回収されている。それでも、最大で2%は道に捨てられたり海に流れたりしています。この対策を立てるべく、まずは実態を正しく把握するためにフィールド調査にも力を入れています。

「容器の2030年ビジョン」がアップデート。 何がどうなる? 10の質問で解き明かす!

販売した容器と同じだけの重さの、他社製品含む容器を回収

 

Q8 空容器は自動販売機の横に設置したボックスでも回収されていますが、残念ながら一般ごみが捨てられることも多いそうですね。どのようにこの状況を改善していきますか?

A8 業界団体とも連携して、皆さんにわかっていただける啓発活動を続けています。

私たちは1970年、業界に先駆けて自社の自動販売機の横に容器回収ボックスを設置しました。もちろん、当初から「これは空容器回収ボックスで、ごみ箱ではありません」との啓発活動に取り組んでいますが、一般ごみが捨てられることがまだまだ多いです。
ごみと混ざった中から、回収を委託している業者さんが手作業でPETボトルや缶を分別し、リサイクルを進めています。人の意識を変えることは非常に難しいですが、業界団体とも連携して皆さんの理解を促しています。

ちなみに「単一の素材でないとリサイクルできない」とお話ししましたが、PETボトルも実際にはリサイクルの過程でキャップとラベルを除去しています。これらを外してもらった状態で回収できるととっても助かるので、そんな点も知ってもらえるように活動中です。

 

Q9 現在進行形で、政府や業界団体、自治体などとさまざまな取り組みを進めていますが、2030年に向けてそれらをどのように進化させていくのですか?

A9 目的意識を同じくするパートナーと積極的に組み、より深い活動を進めます。

政府や自治体、他の企業、業界団体などとのパートナーシップは数値を掲げられるものでもありませんが、この数年で目に見えて取り組みが加速しています。

「容器の2030年ビジョン」がアップデート。 何がどうなる? 10の質問で解き明かす!

例えば前述のフィールド調査は、日本財団とともに「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」として行なっています。またセブン&アイ・ホールディングスとの共同企画商品「一(はじめ)緑茶 一日一本」では6月から、同社の店頭で回収したPETボトル由来の再生PET樹脂を100%用いたPETボトルで製品展開をしています。

さらに来年に控える東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、組織委員会と連携して、聖火リレーのランナーが着るユニフォームの生地に、一部PETボトルをリサイクルした素材を使用する予定です。こうしたケースをもっと増やせれば、啓発活動にもつながると思います。

 

Q10 世界的には、プラスチック使用ゼロを目指す「脱プラスチック」の議論が増えていますが、それに関してはどのように考えていますか?

A10 プラスチックの中でもPETボトルは“資源”として十分に活かせるため、コカ・コーラシステムは「リサイクル」を推進します。

PETボトルは軽量で持ち運びがしやすく、何度も開け閉めできる、現代の暮らしに欠かせない容器です。加えてリサイクル率が高く、再生の技術力も上がっています。きれいな形で回収に出してもらえれば、必ず有用なものに生まれ変わります。

あと2%をどうにか回収に漕ぎ着けて、100%回収を目指したい。こう言うと、物理的に1本のPETボトルも廃棄しないなんて無理だと指摘されることもありますが、目標を掲げないことにはそこに近づくこともできないですよね。私たちは、理想に向かってあきらめずに挑戦していきます。

そしてその方法は、“楽しく!”がコカ・コーラ社流です。小難しく説明するより、「あの聖火ランナーのユニフォームってPETボトルが使われてるんだって!」と話題にしてもらえるようが、よっぽど皆さんの意識が変わると思うので、楽しい企画でリサイクル意識と行動を促していきたいですね。

 

「容器の2030年ビジョン」がアップデート。 何がどうなる? 10の質問で解き明かす!

しばた・みつる / 1993年に大学卒業後、住宅メーカーに勤務。その後、経営コンサルティング会社、環境コンサルティング会社を経て、2007年日本コカ・コーラ入社。技術本部労働安全衛生・環境サスティナビリティガバナンス部長として環境マネジメント全般を担当。