みなさんは、飲み終わったPETボトルをどうしていますか? 家庭で出たものは、自治体やスーパーのリサイクルに。外では、たとえばコカ・コーラシステム(*1)の自動販売機なら脇に据えられた回収ボックスに出すこともできます。
現在、日本のPETボトルの回収率は、89%。これは世界の中ではトップレベルの回収率です。一方で、残りの11%がどうなっているのかは、実体がつかめていません。多くは可燃物として焼却されたり、不燃物として埋め立てられていると推察しますが、その一部は、今世界規模で問題となっている「海洋ゴミ」の一因になっています。
2018年1月末、日本コカ・コーラは、容器の回収・リサイクルをより一層進めていくことを宣言する「容器の2030年ビジョン」を発表しました。これは、米国本社が掲げた「廃棄物ゼロ社会」を実現するためのグローバルプランに基づいて策定されたもので、「廃棄物ゼロ社会 日本版」ともいうべきものです。技術本部の柴田充にその挑戦の詳細を聞きました。

*1 コカ・コーラシステム……日本のコカ・コーラシステムは、原液の供給と、製品の企画開発・マーケティングを担う日本コカ・コーラと、製品の製造・販売を担うボトラー社や関連会社などで構成される。日本コカ・コーラは、ザ コカ・コーラ カンパニー(本社:米国ジョージア州アトランタ)の日本法人。

文=高島知子
写真=村上悦子

 

■「販売容器は100%リサイクル」の大目標

──今回は、PETボトルや缶などのリサイクルについて、今の日本ではどんな状況になっているのか、また日本コカ・コーラでどんな取り組みをしているのかをお聞きします。まず、柴田さんの仕事について教えてください。

柴田 私のいる技術本部という部署は、たとえば新型容器の導入や品質管理など、当社の技術全般を担っています。その中で私のチームは環境と労働安全衛生という二つの領域に携わっていて、今回のリサイクルのような、企業としての環境問題への取り組みも主導しています。私は入社以来このチームにいて、12年目になりますね。

──元々、環境系の研究やお仕事をされていたんですか?

柴田 そうですね。そもそも大学で環境保全分野の研究をしていて、日本コカ・コーラの前は環境経営のコンサルティング会社に勤めていました。日本だとだいたい2000年ごろから、企業として環境問題に取り組むべきという意味合いで「環境経営」という言葉が広がり始めて、支援のニーズも強くなっていって。そんな中で当社と縁があり、支援側から当事者の企業の立場になったという経緯です。

──そうなんですね。その日本のコカ・コーラシステムは、今年1月末に「容器の2030年ビジョン」を発表しています。この発端をうかがえますか?

柴田 日本がこれを掲げた背景には、先んじて1月下旬に米国本社のザ コカ・コーラ カンパニーが発表した、2030年までに「廃棄物ゼロ社会(World Without Waste)」を目指すという新たなグローバルプランがあります。廃棄物ゼロということは、要するに「100%リサイクルします」ということです。これまでの容器の回収とリサイクルに関する取り組みを抜本的に見直して、ザ コカ・コーラ カンパニーは世界のコカ・コーラシステムが販売する製品と同等量の容器を、回収してリサイクルすることを目標にしました。

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。 「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【前篇】

日本コカ・コーラ 技術本部
労働安全衛生・環境サスティナビリティガバナンス部長
柴田充

 

■喫緊の課題は「海洋ゴミ」

──この策定の背景には、どういったことがあるのでしょうか?

柴田 今、地球は多くの環境問題を抱えていますよね。当社に直接的に関係するものでも、エネルギー使用に伴う気候変動や、水資源の不足といった複数の課題があります。中でも世界的に速やかに対策しなければいけないのは、海洋ゴミの問題です。残念ながら、PETボトルをはじめとするたくさんのゴミが海に流出して、海洋生物に影響を与えています。

──たしかに、海や河川の汚れは、ニュースでも取り上げられることが増えたと思います。

柴田 海岸や岸辺に打ち上げられる一般ゴミは、どこかで誰かが捨てているわけですよね。故意ではなかったとしても、正しく処理されていない。海洋生物への影響や環境の汚染は深刻で、このままだと2050年には海で生きる魚の総重量をプラスチックゴミの重量が上回る……とも言われているくらいです。たとえばクラゲを食べるカメがクラゲと間違えてプラスチックゴミを食べてしまうといった事態が起きたり、生態系への影響も指摘されています。また、海洋ゴミを食べた魚などを私たちが食べることで、二次的、三次的な悪影響も考えられます。この経路や影響を究明する研究もされてはいますが、正直、まだ分からないことが多いんですよね。

──……食物連鎖のピラミッドは何層にも重なっていますから、最終的に食卓に上る魚がプラスチックゴミを食べてきたのか、それが私たちの体にどう影響するのかなんて、分かりようがない気がします。

柴田 研究が進み、いずれはどう影響するか理解できるでしょうが、分かってから行動したのでは遅いかもしれません。だがら、企業は企業のできること、つまり海洋ゴミの削減をこれまで以上に強力に進めないといけません。一刻も早く始めないと、取り返しのつかないことになってしまう。そうした背景が、ザ コカ・コーラ カンパニーの発表にありました。

コカ・コーラシステムは飲料業界のリーディングカンパニーとして、地球環境の保全に対して積極的に取り組みたい。プラスチックを使っているメーカーとして責任を果たしたいという考えがあります。

 

■「設計」「回収」「パートナー」の三つの柱

──では、「容器の2030年ビジョン」は、米国本社のグローバルプラン策定を受けて日本が発表した「廃棄物ゼロ社会(World Without Waste)日本版」ともいうべきものなんですね。どういう内容なのでしょうか?

柴田 大きく、「設計」「回収」「パートナー」という三つの柱で、目指すことと行動を決めました。まず「設計」とは、まさに容器の設計をどうしていくかという話で、具体的には二つの軸を掲げています。

一つは、2025年までにすべての容器をリサイクル可能にすることです。「すべて」にはPETボトルに限らず、缶やびんなども含まれます。実は、たいていの素材は技術的にはリサイクルが可能なんです。でも、素材によってはリサイクルするのにすごくエネルギーが必要で、環境により負荷がかかる場合もあります。回収やリサイクルのインフラも必要です。そうしたものを、容器の研究開発やその他の工夫によって、リサイクルできるようにしていきます。

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。 「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【前篇】

──100%リサイクル可能にする、と。日本でも大きな数値目標を掲げたのですね。

柴田 そうですね。そしてもう一つの軸は、PETボトルに特化した「Bottle to Bottle(ボトル・トゥ・ボトル)」、つまりPETボトルからもう一度PETボトルをつくることを推進していくプランです。ボトル以外へリサイクルすることもできますが、当社の事業を踏まえると、やはりなるべくボトルへ再生したい。すでに今までも注力していて、現状だとたとえばお茶製品では、1本のPETボトルの原材料のうち約30%は再生材を使っているんです。

2030年までに再生材の割合を、すべてのPETボトルの平均で50%以上にしようと掲げています。そのためには、少しでもきれいな状態で回収することがすごく大事になりますね。お茶、水、炭酸など製品によってそれぞれ最適なボトルの形があり、今は再生材の使用率も違うので、その点もまだ研究の余地があります。

■自動販売機の横にあるのは「ゴミ箱」ではない!?

──では二つ目の柱「回収」とは?

柴田 これは米国のザ コカ・コーラ カンパニーと同じく、コカ・コーラシステムが販売した量と同じだけの容器を集めよう、ということです。100%回収ですね。日本でのPETボトルの回収率は89%と高いものの、行き先の分かっていない分が11%あります。そして、このうちの一部が海洋ゴミになっています。自治体やスーパーでPETボトルをリサイクルに出している人も多いと思いますが、私たちも実はずっと回収しているんです。コカ・コーラシステムの自動販売機の脇にある回収ボックスは、私たちが管理しているものなんですよ。残念ながら、回収ボックスではなく、ゴミ箱と思われていることも多いんですが……。

──言われてみれば、あまり意識したことがなかったです……。

柴田 本当はラベルやキャップを外してもらえるとリサイクルの観点でとても望ましいんですが、現状の回収ボックスは分別ができるようにはなっていません。弊社のオフィス内では分別可能なボックスを設けているんですが、道路脇など外に置く回収ボックスだと、スペースの都合もあり分別する機能を付けるのが難しいんですよね。それにしても、びっくりするくらい、いろいろなものが入っていますよ。飲料容器だけでなく、お弁当のゴミなどまで……。もちろん、ダメだと分かって捨てているなら止めてほしいですが、本当にゴミ箱だと思い、“ゴミを正しく捨てている”と思っている人もいる。そこは、回収ボックスの存在と意義を知ってもらう活動がもっと必要ですね。

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。 「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【前篇】

関連会社が運営するリサイクルセンター

──ちなみに、そんなふうにゴミと混ざってしまったPETボトルは、どう分別しているんですか?

柴田 全国でコカ・コーラシステムが回収した後、各地域のリサイクル業者さんに引き渡して、基本的に人の手と機械で、仕分け作業をしていただいています。家庭からリサイクルに出すPETボトルは比較的きれいなものが多いですが、道路脇など家庭以外で回収された容器はそんな状況なので、一般ゴミと分けて、飲み残しを捨てて。たいへんな作業なので、仕分けに携わっている方には頭が下がる思いです。その後、専門業者さんの機械で徹底的に洗浄して粉砕し、リサイクル可能な状態にするのですが、元のPETボトルに異物が入っていると、わずかながらも異物が残り、どうしても質が悪くなるんです。元がきれいであるに越したことはないんですね。

──実際にどのようにリサイクルされていくのかや、作業してくれている人がいるんだということを知れば、行動も変わっていきそうですね。そして、最後の「パートナー」とは?

柴田 これには目標数値などはないのですが、ここまでお話しした設計や回収の取り組みを、飲料をお飲みいただく消費者のみなさまや行政、流通各社、リサイクルの協力企業とともに進めたり、ほかの飲料メーカーも参加する業界団体として取り組んだりと、「みんなでやっていこう!」ということです。実際、全国清涼飲料連合会という組織で毎月のように議論して、動きを大きくしようと模索しています。

いろいろな環境系の団体と話すことも多く、極論ですが、「プラスチックを使わなければいい」という意見を聞くこともあります。でも、電気や自動車と同じで、プラスチックは私たちの生活に必要不可欠な有用な素材ですよね。それなら、プラスチックの有用性を享受しつつ、発生している社会課題にしっかり向き合って、企業としてできる限りのことに力を注ごう、というのが私たちのスタンスです。

(後篇に続く)

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。 「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【前篇】

しばた・みつる / 1993年に大学卒業後、住宅メーカーに勤務。その後、経営コンサルティング会社、環境コンサルティング会社を経て、2007年日本コカ・コーラ入社。技術本部労働安全衛生・環境サスティナビリティガバナンス部長として環境マネジメント全般を担当。

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