2018年1月末、日本コカ・コーラは、容器の回収・リサイクルをより一層進めていくことを宣言する「容器の2030年ビジョン」を発表しました。これは、ザ コカ・コーラ カンパニーが掲げた「廃棄物ゼロ社会」を実現するためのグローバルプランに基づいて策定されたもので、「廃棄物ゼロ社会 日本版」ともいえます。前篇では、日本での方針とロードマップについて、技術本部の労働安全衛生・環境サスティナビリティガバナンス部長の柴田充に聞きました。
後篇では、一般消費者ができる具体的な取り組みを、さらに詳しく聞いていきます。「“楽しく”知ってもらい、実践してもらうことがコカ・コーラシステム(*1)流」と話す柴田の真意とは?

*1 コカ・コーラシステム……日本のコカ・コーラシステムは、原液の供給と、製品の企画開発・マーケティングを担う日本コカ・コーラと、製品の製造・販売を担うボトラー社や関連会社などで構成される。日本コカ・コーラは、ザ コカ・コーラ カンパニー(本社:米国ジョージア州アトランタ)の日本法人。

(前篇はこちら)

文=高島知子
写真=村上悦子

 

■回収できていない容器をどうするか?

──前篇では、海洋ゴミの現状や「容器の2030年ビジョン」の三つの柱について、またコカ・コーラシステムが自社の自動販売機の脇にあるPETボトル回収ボックスの管理もしていることなどを聞きました。

柴田 きれいな状態でリサイクルに出せば、それだけ再生したときの質が良くなります。私もこれまでいろいろと環境問題に取り組んで、実感していますが、やはり一般のみなさんに“知ってもらうこと”が、活動を大きくするのにとても大事なんです。回収ボックスがゴミ箱と勘違いされないように広報や周知をするだけでなく、実際にPETボトルがどのようにリサイクルされているのか、海洋ゴミがこのまま増えるとどんな悪影響があるのか、そうしたことも一つずつ知ってもらえたらと思いますね。

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【後篇】

日本コカ・コーラ 技術本部
労働安全衛生・環境サスティナビリティガバナンス部長
柴田充

 

──環境問題は、ともするとテーマが大きく、なかなか一般の生活者として身近なもの、自分に関係があるものだと実感するのが難しかったりします。

柴田 そうなんです。それは本当に、難しい部分ですね。先ほど(前篇参照)、日本のPETボトルの回収率は89%。残りの11%については行き先が分からないとお話ししました。11%の中の一部が、ポイ捨てされて街のゴミや海洋ゴミになっているでしょう。どうすれば、ポイ捨てのような行為を減らせるのか……。

 

■「地球のため」ではなく「自分のため」に

──ポイ捨てする人を言葉で説得するのは、ハードルが高そうですよね……。何か、自然に取り組んでしまう仕組みをつくるとか?

柴田 それは一つの手ですね。私たちが回収している、自動販売機の脇の回収ボックスのデザインや立て付けをもう少し工夫して、「環境のため」という意識がなくても自然とPETボトルを集められる仕組みができないかというのも、チームで模索していることの一つです。

私がずっと考える中で、人を動かす可能性があるかな、と思うのは「楽しめる」ようにすることなんです。以前ドイツに視察に行ったとき、そう思ったんですよね。

──リサイクルを「楽しむ」?

柴田 もう少し広い意味で、環境問題への取り組みを楽しむ。もしくは、主体的になる。少し語弊があるかもしれませんが、「やらなければいけないこと」とか「正論」は、実はなかなか聞き入れにくいものだったりもします。PETボトルのリサイクルに関していえば、そういう説得で行動してくれる人は、もうやっているわけで。

ドイツは環境問題への対策の先進国として有名で、私も数年前に訪れていろいろな人に話を聞きました。それで印象的だったのは、環境についての視察や見学なのに、あんまりみなさん環境の話はしないんですよ。「地球が」とか、「動物が」とか、言わない。むしろ、自分たちの「クオリティー・オブ・ライフ」を強調していました。

──地球のために、とかではなく「自分のために」という視点があるんですね。だから、みんな自然に取り組めるし、続けられる。

柴田 そうです。環境への取り組みは、自分が豊かに暮らすためにやっていることだし、子どもや孫の未来を明るくすることだという感覚が自然と根付いていました。とてもポジティブで、楽しい意識がベースにあった。ドイツのこうした風潮は、環境経営コンサルティング会社に勤めていたころの上司からも聞いたことがあって、「小難しいことを話しても9割の人は聞いてくれない」と。“誰か”や“何か”のためではなく、“自分”と“仲間”のための活動なんですね。

そこで、楽しく取り組むことが日本でも一つのカギになるだろうと考えて、「日本ハムファイターズの応援TシャツをPETボトルの再生材からつくる」という企画をやってみました。

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【後篇】

 

■「日ハム応援Tシャツ」で8,000本回収を実現

──これが、そのTシャツなんですね。PETボトルからできてるとは、まったく分かりません。それよりも、人気選手がぎっしり盛りだくさんで、プレミア性が高そうです!

柴田 外部から企画を提案いただき、日本コカ・コーラとして協働したのですが、「楽しくリサイクル」がコンセプトでしたので、プロジェクト自体もとても楽しかったです(笑)。日本コカ・コーラが「容器の2030年ビジョン」で掲げる三つの柱のうちの一つに「パートナー」(*他企業や他団体と協働して取り組みを進めていこうという方針)を挙げましたが、これはまさに他社との協業で実現した企画でした。「楽しくリサイクル」の考えに賛同された北海道日本ハムファイターズさん、そしてイオン北海道さんと一緒に取り組むことができました。

具体的には、昨年12月の約3週間、札幌のイオン3店舗で応援Tシャツ専用のPETボトル回収ボックスをつくり、リサイクルを促進しました。その結果約8,000本が集まり、応援Tシャツを5,000枚制作して5月に球場でプレゼントしたんです。

──これがきっかけで、PETボトルの再生がどういうものなのかを知った人も多かったかもしれないですね。

柴田 まさに、それを狙ったものでした。重複しますが、そもそも「PETボトルがその後どのようにリサイクルされるのかを知ってほしい」という課題があったので、リサイクルの仕組みに楽しみながら触れてもらうための企画だったんです。日本人は真面目なので、目的や意義を理解いただけたら、必ずそれに沿った行動を取ってくれるのでは……という仮説を立てていました。

──なるほど。その手応えは?

柴田 大きかったですね。イオンさんには以前から回収ボックスはあったのですが、それとは別に、日ハムファンだからと目を止めてくれたり、現場のスタッフに質問したりする方もいました。前篇でお話しした通り、私たちは「Bottle to Bottle」、つまりPETボトルをPETボトルへとリサイクルすることをこれからは推進していきます。でも、周知のためにはできるだけ出口が分かりやすいほうがいいな、と。だから、今回はTシャツという形にしました。一つの社会実験でしたが、一定の効果があったと思います。

やっぱり、コカ・コーラシステムは飲料を通して“さわやかさ”のほか、“楽しさ”といった価値を提供しているので、リサイクル促進も楽しくやらないとな、と思うんです。共感してくださる周りのみなさんと一緒に。

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【後篇】

 

■「楽しみながら知ってもらう」がコカ・コーラ社流

──それが、コカ・コーラ社らしい環境問題への取り組みの一つの姿勢なんですね。

柴田 そう思っていますね。楽しさがあってこそ、正しく現状把握をして行動してもらうというアプローチの効果も大きくなるだろうと思います。

──ちなみに、柴田さんは大学ですでに環境の研究をされていたとのことでしたが、そもそも関心を持つきっかけはなんだったんですか?

柴田 ええと(笑)、小学校5年生のときに「自然破壊のためにパンダが絶滅の危機にある」と訴え、寄付を募るテレビを観たんです。それで寄付をしたら、なんとパンダからお礼のお手紙が届いたんですね。もちろん事務局からなんですが、それで「環境って大事だ!」と子どもながらに思ったのが原体験です。

でも、私の場合はたまたま早かったですが、ずっと仕事で関わり続ける中で、中年のおじさんが偶然聴いた講演をきっかけに環境の大切さに目覚める、なんてこともたくさん見てきました。年齢じゃないんですね。自分に関係がある身近な問題だと思えるきっかけさえあれば、意識は変わるんです。

──なるほど。今は昔と違って、小学校でも環境問題を教えたりしていますよね?

柴田 そうそう、私も小学生の息子に「リサイクルって大事なんだよ」と言われたりしますよ(笑)。教育はみんなの意識を底上げしていく上で、とても重要ですよね。そうした社会的な動きも加味して、また、さまざまなパートナーと協力しながら、着実に成果を積み上げていきたいと思います。グローバルで掲げている目標も、日本コカ・コーラとしての目標も、決して簡単に達成できるものではないということは、私たちも重々分かっています。それでも、極力100%に近いところにもっていかないと、本当に海洋汚染の問題を解決することはできません。プラスチックを使うメーカーとして、また業界のリーダーシップを取る存在として、この社会問題に本気で取り組んでいきます。

みんなで、本気で、楽しく、取り組む。「100%リサイクル」達成のためにコカ・コーラシステムができること【後篇】

しばた・みつる / 1993年に大学卒業後、住宅メーカーに勤務。その後、経営コンサルティング会社、環境コンサルティング会社を経て、2007年日本コカ・コーラ入社。技術本部労働安全衛生・環境サスティナビリティガバナンス部長として環境マネジメント全般を担当。

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