若い消費者たちは、どんなことに興味・関心を持ち、どんな飲料製品を求めているのか──。東京学芸大学と日本コカ・コーラは、ミレニアル世代(*1)のニーズを探る共同プログラムを実施した。その名も、「ジョイントプログラム ~ミレニアル世代からの新製品提案~」。学生たちが「市場調査」をもとに考案した新製品の企画を、日本コカ・コーラの役員に直接提案するというものだ。約4ヵ月にわたるプログラムの期間に、学生たちからどんな企画が飛び出したのだろうか。

*1 ミレニアル世代……1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代を指す言葉。小さい頃からデジタル端末やソーシャルメディアに触れているので、「デジタルネイティブ」とも呼ばれ、ビジネスシーンに新しい価値観をもたらすのではないかと注目されている。

文=香川誠
写真=村上悦子

 

■学生にも日本コカ・コーラにもメリットのあるプログラム

 2018年6月中旬。東京学芸大学の学部生・大学院の23人と、日本コカ・コーラの社内変革プロジェクト「ミレニアル・ボイス」(*2)のメンバーが、大学の環境教育研究センター・多目的教室に集まった。

 行われていたのは、東京学芸大学と日本コカ・コーラの共同企画「ジョイントプログラム~ミレニアル世代からの新製品提案~」の2回目のワークショップ。学生たちの間には、やや緊張感が漂っている。それというのも、この日は学生たちが一人ひとり、自分の考えた新製品の企画概要をミレニアル・ボイスのメンバーたちに見てもらい、その場でフィードバックをもらうことになっているからだ。

*2 ミレニアル・ボイス……日本コカ・コーラの社内プロジェクト。ミレニアル世代の社員が集まり、「マーケットプレイス(市場調査)」「ワークプレイス(職場環境改善)」「パートナー(人材交流)」の3つのテーマを柱に、部署や役職に囚われず、会社をより良くするための社内横断的な施策を実施している。

学生が本気で新製品を考え、会社に提案! 「東京学芸大学×日本コカ・コーラミレニアルプロジェクト共同プログラム」レポート

 その模様をお届けする前に、このプロジェクトの概要を説明しよう。

 ジョイントプログラムとは、ミレニアル・ボイスの活動の柱の一つ、「マーケットプレイス(市場調査)」の一環として立てられた企画。このプログラムを通じて、ミレニアル・ボイスのメンバーは、学生たちの提案からミレニアル世代のニーズをリサーチすると同時に、学生たちにロジカルシンキングやプレゼンテーションスキルの学習の機会を提供する。日本コカ・コーラと学生、どちらにもメリットのある内容になっているのだ。

学生が本気で新製品を考え、会社に提案! 「東京学芸大学×日本コカ・コーラミレニアルプロジェクト共同プログラム」レポート

 4月に参加学生を募集し、最初のワークショップは5月に開かれた。そこで学生たちは、製品開発がどのようなプロセスで行われるのか、ミレニアル・ボイスのメンバーからレクチャーを受け、個々に新製品のアイデアを考えてこの2回目のワークショップを迎えた。

 学生は5つのチームに分かれており、最終的にはチームで一つの企画をまとめ上げて8月下旬の最終発表に臨む。チームの企画が決まる日本コカ・コーラ社内での「中間アイデア投票」まで、学生たちは自分の製品企画を練り込んでいく。

 

■健康志向、インスタ映え……ミレニアル世代ならではの企画が続々

 2回目のワークショップは、学生たちが自分で考えた個々の企画に対して、社員から直接感想やアドバイスをもらえる初めての機会。トップバッターの男子学生は、「コカ・コーラバーン」という新製品を考案してきた。

「同世代60人にアンケートを取ったところ、健康を気にしている人が多いことが分かりました。清涼飲料で砂糖を摂取しても、体内で燃やせばいいんだというポジティブなイメージを持ってもらうための製品を考えました」

 60人へのアンケートを1日で行ったという男子学生に、「時間が短く大変だったのでは?」と聞くと、TwitterやLINEを駆使してアンケートを取ったのだという。他にもグーグルフォームなどを利用する学生もおり、オンラインサービスを駆使して作業を効率的に進めるミレニアル世代ならではの“時短術”も垣間見られた。

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 豆乳製品「Soyllusion」を企画した女子学生は、豆乳が「おいしくない」と感じている人の中にも、豆乳に「興味はある」という人が多いことに着目した。

「高校の友人らにも依頼して、男女半々ずつアンケートを取りました。すると、『豆乳が好きではないが興味はある』という人が多いことが分かりました。意外だったのは男子の回答。タンパク質を摂ることを目的に豆乳を飲む人が多かったのです」

 他にも、炭酸と果物を合わせてインスタ映えも意識した「FASH」、合成着色料や保存料を使わずに健康志向の人もメロンソーダを楽しめる「マスクメロンの贅沢ソーダ」、お金がない学生でも小腹を満たせる「スープチャージ」など、さまざまな視点から新製品のアイデアが披露された。

 ミレニアル・ボイスのメンバーたちは、学生たちのアイデアに感心させられつつも、「こういう説得材料があるともっと分かりやすい」「資料は視覚的にもう少しインパクトがあるといい」など、その企画に説得力をもたせるためのアドバイスを送った。

 ワークショップの途中、就職活動の相談をする学生もいた。実はこのプログラムでは、今悩んでいることを相談するなど、学生たちが社員と交流できるようにもなっている。学生にとって、普段はあまり接点のない社会人から話を聞く、貴重な機会となったようだ。

 

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 この日のワークショップが終了してからも、話し合いを続ける熱心なチームもあった。互いに情報や意見を交換しているらしい。しかし中間アイデア投票で選ばれる企画は、チームで一つ。つまり今の段階ではメンバー同士が、いわばライバル関係のようなものだが……。

「みんなでフィードバックし合って、次までにどれだけ企画を良くできるか、高め合う競争をしているんです」

 しのぎを削るよりも、互いに高め合う。ミレニアル世代は、競争意識の持ち方も上の世代とは少し異なるのかもしれない。

学生が本気で新製品を考え、会社に提案! 「東京学芸大学×日本コカ・コーラミレニアルプロジェクト共同プログラム」レポート

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■中間アイデア投票で各チームの新製品企画が決定

 次に『Coca-Cola Journey』編集部がワークショップを訪れたのは、7月上旬。この日は冒頭で、前の週に日本コカ・コーラ本社で行われた「中間アイデア投票」の結果が発表された。中間アイデア投票は、チームごとに最も良いと思った企画に投票するもので、日本コカ・コーラの社員154人が参加した。

 どの学生も自分の企画には思い入れがあるが、最終発表会に残る企画は1チーム(4~5人)につき一つだけ。多くの企画が中間アイデア投票の結果次第で“お蔵入り”になってしまうが、学生たちに落胆している暇はない。最終発表会に向けて、今度はチームでの共同作業が始まるのだ。

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 中間アイデア投票の結果発表が終わると早速、ミレニアル・ボイスのメンバーから学生たちに、製品の魅力を伝えるためのプレゼンテーションのコツを教えるレクチャーが行われた。2回目のワークショップでは、どの学生も自分の企画を上手に説明していたように見えたが、それはあくまで自己流のもの。この後に控える日本コカ・コーラの役員にプレゼンするには、まだまだ技術的に足りていないことも多い。ロジカルシンキングに基づいたプレゼン術、グラフィカルで分かりやすいプレゼン資料のつくり方をプロから学ぶべく、学生たちは真剣に耳を傾けていた。

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■いよいよ最終プレゼン! 役員たちの反応は?

 8月下旬。ついに日本コカ・コーラ本社での最終発表の日が来た。学生たちは、この日のために夏休み返上で準備をしてきた。ホルヘ・ガルドゥニョ代表取締役社長はじめ、日本コカ・コーラの役員たちとの顔合わせが終わると、学生たちのプレゼンが始まった。持ち時間は1チーム10分ずつ。スライドを見せながら、ミレニアル世代のニーズに応える新製品企画を発表した。

学生が本気で新製品を考え、会社に提案! 「東京学芸大学×日本コカ・コーラミレニアルプロジェクト共同プログラム」レポート

●Aチーム「With」
キャッチコピーは「1日をFightする」。従来のエナジードリンクは、「独特な味がする」「体に悪そう」などの理由により、大学生にとってあまり魅力的な製品ではなかった。そこで、飲みやすく、さらに学生のかばんにも入れやすい直方体の容器のエナジードリンクを提案。

●Bチーム「EIR(エイル)」
バスタイムにリラックス効果をもたらす製品。見て、嗅いで、飲む、“三感”で楽しめるミネラルウォーター。「EIR(エイル)」とは、北欧の神話に出てくる女神のこと。海外市場もにらんでのネーミングらしい。

●Cチーム「THE BLUE OF THE SKY AFTER RAIN」
容器入り清涼飲料ではなく、棒状の細い筒の中にパウダー状のお茶が入った“ティースティック”。水の入った容器にこのスティックを入れると、パウダーが溶け出し、いつでもどこでも中国茶を楽しめるというもの。製品名の和訳は「雨上がりの青い空」。

●Dチーム「Rose & Smoothie」
落ち着く香りのローズティーと、栄養豊富なスムージーをかけ合わせた製品。働く女性をメインターゲットにしている。忙しい人でも、スキマ時間に飲めるように、容量やPETボトルの形状などを考えた。心と体の両方の健康に気をつかった製品が市場に少ないことに着目した。

●Eチーム「Jowish」
キャッチコピーは「1本で2つの美味しさ」 。調査により、「炭酸が抜けるとおいしくなくなるから(甘さが際立つ)」という理由で、大学生は炭酸飲料をあまり飲まないことが分かった。そこで、半分飲んだら容器を振り、下部のゼリーと混ぜることで食感を変え、最後まで飽きずに楽しめる本製品を考案した。

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 それぞれのチームの発表後には、役員からの質問タイムがあった。学生たちの柔軟な発想に感心する一方で、ネーミングや価格、容量など細部について「なぜそうしたのか」と、根拠を問う質問が多かった。「まさかそこを突かれるとは……」という表情で固まるチームもあったが、代表者が前に出てその理由を説明。全チームのプレゼンテーションは無事に終了した。

「皆さん、すばらしい熱意と責任感で取り組んでくださったおかげで、今日は本当に有意義な時間を過ごすことできました。ありがとうございます」(ホルヘ・ガルドゥニョ代表取締役社長

 多くの学生にとって、企業に直接プレゼンをするのはほとんど初めての経験だが、日本コカ・コーラの役員たちにとっても、学生たちの発想や情熱に触れる貴重な機会となったようだ。

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 今回の新製品提案プログラムは、実際の製品化に結びつけることが目的ではない。学生たちは自分たちのアイデアを形にするためのプロセスを学び、日本コカ・コーラはミレニアル世代のニーズや考え方を知る手がかりをつかんだ。そこから何が生まれるかはまだ分からないが、双方にとって、新しいことが始まる第一歩になったことは間違いないだろう。