世界200以上の国や地域で飲まれている「コカ・コーラ」。製品の製造は各地域で行なっていますが、つくる人も環境も異なるのに同じ製品が飲めるのって、当たり前に思えて、実はすごいことですよね。
コカ・コーラ社がそれを実現できるのは、世界共通の品質管理システム・通称「KORE(コア)」によって、全世界で品質基準やオペレーションが厳格に守られているからなのです。
今回は、現役大学生の西村華子(にしむら・かこ)さん日本コカ・コーラで「KORE」を担当しているお二人に直撃取材。コカ・コーラ社の品質管理の秘密に迫りました。

文=西村華子
イラスト=SANDER STUDIO

 

カラッと気持ちよく晴れた日に、思わず手にとって飲んでしまう「コカ・コーラ」。
シュワーっと音を立てる液体を、ゴクリと飲む。ああ! この感じ!

この“変わらぬ味”を、裏でずっと“守り続けている人たち”がいるらしいのです。

あ、自己紹介が遅れました。こんにちは、上智大学3年生の西村華子です。私は現在、ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育) を中心に教育学を学んでいます。コカ・コーラ社はサスティナビリティーを大切にしている企業ということで、信念や考え方にとても共感しています!

[大学生の社会科見学] 「いつでも、どこでも、“あのおいしさ”がある理由」 コカ・コーラ社の品質管理システム「KORE」に迫る!

私たちが普段から飲んでいる「コカ・コーラ」や「ジョージア」「い・ろ・は・す」「綾鷹」などの製品。いつでも安心して飲むことができるのは、それらがとても厳格なルールの下でつくられているからだそう。今日はそんなコカ・コーラ社に社会科見学に行き、製品の安全を守っているその仕組みについて、詳しく調べてきました。

 

■KOREっていったい何?

今回お話を伺ったのは、日本コカ・コーラの技術本部の松熊宏幸(まつくま・ひろゆき)さん福良運(ふくら・はこぶ)さんです。大学生の私にも理解しやすいように、丁寧に説明してくださいました!

コカ・コーラ社には、製品の品質を守るための厳格なルールがあると聞きました」

「それは『KORE』のことですね。KOREとは全世界のコカ・コーラ社に共通する、品質管理とオペレーション管理のためのマネジメントシステムです。Coca-Cola Operating Requirementsの通称で、原材料の調達から製造、物流・輸送、販売を経てお客様に製品が届くまでの各過程において、『品質』に加え、『食品安全』『環境』『労働安全衛生』という4つの側面において、規格・要求事項(ルール)・作業手順を文書で定めています」(福良さん

「文書は、アトランタにあるザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)で作成されています。KOREで定められた基準が守られているか、不定期に現地からの監査がやってくるんですよ」(松熊さん

なるほど。いつ、どこで飲んでも「コカ・コーラ」のおいしさが変わらない理由は、このKOREにあるようです。

[大学生の社会科見学] 「いつでも、どこでも、“あのおいしさ”がある理由」 コカ・コーラ社の品質管理システム「KORE」に迫る!

「お二人は、KOREのどの部分に携わっていらっしゃるのでしょうか?」

「私は主に、製造工程を担当しています。KOREで定められたオペレーションをきちんと守ってもらうために、製造工場に行って分かりやすく説明をしたりします。また、米国から監査が来たときに、万が一不適合があった場合には、その是正も行います」(松熊さん

朗らかな笑顔がステキな松熊さんは、KOREが日本できちんと守られているかチェックする、番人のような存在なんですね。ちなみに、コカ・コーラ社歴17年で、品質管理においては“超”のつくベテランさんです!

そして、お二人目、パワフルでさわやかな福良さんコカ・コーラ歴は6年だそう。

「私は、お客様が口にして問題ない製品を届けるため、販売工程の仕組みをつくり、その仕組みを現場に導入し維持していく仕事をしています。その際の基本となるルールがKOREなんです」(福良さん

バンっ!
福良さんが出してきたのは、なんとKOREの原本!

「うわっ! 全部英語ですね。しかも、すごい量……」

「これでも減ったんですよ。1年前には、この3倍くらいはあったかな(笑)」(松熊さん

とっても分厚い上に、中身は頭がクラクラするほどの文字の数。
このルールをすべてクリアしているなんて、信じられません。

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■国際規格ISOだけではダメなの?

ところで、「品質の基準」といえば国際規格の「ISO規格」があります。ISOとは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)のこと。国際間の取引に弊害をなくすため、いろいろな製品やサービスについて、世界中で同じ品質・同じレベルのものが提供されるように共通の基準を定めているのです(事前に予習しました!)。

さまざまな機関や企業がISOから認証を得ていて、もちろん、コカ・コーラ社もISOの認証を取得しているはずですが、なぜ、更に厳しいマネジメントシステムを持っているのでしょうか。

「信頼される国際規格のISOがあるのに、どうしてKOREが必要なのですか?」

「ISOはあくまで一般的な基準。『コカ・コーラ』という製品の“あるべき姿”の答えは、ISOのどこにも書かれていません。我々の製品が、“こうあるべき”“このように提供されるべき”っていうのは、自分たちで決めなきゃいけないんです。KOREで定めていることは、ISOという大きな枠組みの中で、我々が固有でやらなきゃいけないことなんです」(松熊さん

「ISOという一般的な基準の上に、製品に即した具体的な規定がないと、皆さんに私たちの製品は届けられないんですよ」(福良さん

[大学生の社会科見学] 「いつでも、どこでも、“あのおいしさ”がある理由」 コカ・コーラ社の品質管理システム「KORE」に迫る!

つまり、個々の製品がどうあるべきか、それを製造するためにどんな手順を取らなければいけないかを考えるのは各企業の責任。そこを文書で定めたものがKOREであり、だから具体的で、より明確なマネジメントシステムでなくてはならないのです。

 

■働く人にも環境も優しいKORE

KOREでは、「品質」だけでなく、「食品安全」「労働安全衛生」「環境」に関する内容も網羅されているとのことですが、それぞれについて、実際にKOREで定められている例を紹介します。

「労働安全衛生」については、オペレーションの改善に取り組んでいる事例があります。かつては、製品や空き容器を車に積み込む作業の際、高所から誤って転倒する危険がありました。そこで、そのようなリスクをなくすために、車体を人が安全に作業できる高さに変更するよう取り決め、現在導入を進めています。

一方、「環境」の面では、オゾン層破壊の原因であるフロンガスの使用を削減すべく、冷媒にフロンガスを使用しないノンフロン自販機の導入を進めることが、KOREの要求事項として定められています。

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そして、「環境」の中でもとても厳しいのは排水。KOREの排水基準は日本の法律で定められた基準よりもはるかに厳格なもの。多摩工場の排水は、水を戻す川よりも水質がいいのだとか。実際、BOD(生物化学的酸素要求量)という水中の有機物が微生物によって酸化分解される過程で消費される酸素量は、国の基準が160mg/Lなのに対し、コカ・コーラ社の実績はなんと1~5mg /L!!! どのくらい配慮されているのか、分かるというものです。

地域に根差したビジネスをするコカ・コーラ社だからこそ、その土地の環境にも配慮した取り組みに力を入れているんですね。

 

■製品製造用水の規格はとっても厳しい!

そして、製品製造用の水に関しても、やはり厳しい規格が設けられていました。私が驚いたのはそのルールの数!

「KOREは世界共通の統一ルールですが、各国で環境や状況が違う中、ルールを守る上で不便を感じることはありますか?」

「水に対するルールが厳格すぎるということはあるかな。つい去年まではチェック項目が120って言ってたっけ……それくらい製品をつくるための水の規格は非常に厳しい。世界では水質が悪いところもあって、それぞれの地域で飲料水に対する規格が違っている。もともとの水質が低い地域ではこの莫大な数の項目を検査しておかないとリスクが高いのだと思いますけど、日本ではそんなに必要ないかな、ということはあります」(松熊さん

「そんなにも厳しいんですね……」

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日本では、水道の蛇口をひねって出てくる水は、必ず安全が保証されているという認識です。しかし、世界的には綺麗な水は貴重とされていて、飲み水の安全性のチェックは非常に厳格に行う必要があるのだそう。松熊さんのお話を聞いていると、思っている以上に水の規格は厳そうでした。全世界でルールを統一するためには、そういった地域の基準に合わせざるを得ないのです。

 

■「当たり前のように安全であること」の重要さ

私たち消費者の目には触れないところで、大切なお仕事をされている松熊さん福良さん

お話を伺っていると、消費者自身にもこうしたマネジメントシステムや規格の存在を知る必要があり、知れば知るほどもっと製品の良さが分かるのでは?と思いました。しかし、お二人からの言葉は予想外のものでした。

「消費者がKOREのことを知る必要はありますか?」

コカ・コーラ社製品が、当たり前のように安全であるということで、間接的な伝え方はしたいです。でも、『こんなルールがありますよ』『だから大丈夫ですよ』とは、言わなくてもいいですね」(福良さん

「ただ一つみなさんに知っておいてほしいのは、『製品は、開栓したらすぐに飲むのがおいしい』ということだけ(笑)。それさえ守っていただけたら、こうしたルールの存在は知らなくてもいい」(松熊さん

「製品の安全を守っている存在がいると、もっと消費者にも知ってもらいたい」。そのような思いがあるのではないかと、私は勘違いしていました。問題が起こらず、消費者が安全においしく製品を飲むことができたらそれで良いというのは、ずっと品質を守り続けてきたお二人の素直な気持ちなんだと思います。

松熊さん福良さんも、終始「自分たちは黒子的な存在である」とおっしゃっていました。そんなお二人のモチベショーンは、一体どこから湧き出るか尋ねてみました。

[大学生の社会科見学] 「いつでも、どこでも、“あのおいしさ”がある理由」 コカ・コーラ社の品質管理システム「KORE」に迫る!

コカ・コーラ社全体で、『お客様にいつもおいしい製品を飲んでいただく』というゴールに向かって頑張っている。自分がその一部を担えているということが、モチベーションになっていると思いますね」(福良さん

「製品がちゃんと売れてくれれば、僕のモチベーションは十分に上がります。『製品を安定的にご提供できている』という実感だけで、僕は十分です」(松熊さん

お二人は、コカ・コーラ社のポリシーや理念に共鳴しながら、その一員として素敵なお仕事をされているんだなと感じます。

最後に、「KOREが目指すものはなんだと思いますか?」という質問をしたところ、お二人の回答は「優しいコミュニケーション」でした。

優しいコミュニケーションとは、難解であるKOREのルールをかみ砕いて分かりやすい形で現場に伝え、そこで働いている方々にしっかり理解してもらうということだそう。「なぜ、それをやるのか」「なぜ、そのやり方なのか」を、現場の人たちまで全員が共有していることが、コカ・コーラ社のサスティナブルな成長に繋がっていくのではないかなと思いました。

「『コカ・コーラ』がどこの国に行っても同じ味。それが一番の世界共通ルール」

松熊さんがおっしゃっていたこのKOREの中核となるルールは、コカ・コーラ社の理念そのものを表す言葉で、同時に私たちコカ・コーラ社製品のファンが、コカ・コーラ社製品を信頼できる理由でもあります。私は現場で働いている人ではなく消費者という立場ですが、このルールは私が松熊さん福良さんから教えてもらった、「優しいコミュニケーション」の一つだと感じました。

[大学生の社会科見学] 「いつでも、どこでも、“あのおいしさ”がある理由」 コカ・コーラ社の品質管理システム「KORE」に迫る!

「今日もおいしかった」
そう私たちが感じることが、KOREをつくり、守っている人たちの願いなのだと分かりました。

KOREは私たち消費者の目に触れることはありませんが、私たちの安全を守ってくれるものです。「コカ・コーラ」の味を支える番人がいるのだと知ことができたのは、ものすごく貴重な経験になりました。

これからはさらにおいしく、「コカ・コーラ」やコカ・コーラ社製品を楽しめそうな予感です!