「世界水週間」のパネルディスカッションで発言する
ウルリケ・サピロ(手前の女性)

 

文=ウルリケ・サピロ
(ザ コカ・コーラ カンパニー 水管理・持続可能な農業担当シニア・ディレクター)

 

コカ・コーラ社の生命線=水を守るために何ができるか?

毎年スウェーデンのストックホルムで開催されるイベント「世界水週間」は、世界中の政府機関、企業、NGOなどから3,000人近くの参加者が集まり、水の管理や水資源の保全を巡る最新のイノベーションや取り組みについて学ぶ場です。

2018年8月26日~31日にかけて開催された今年のテーマは「水、エコシステム(生態系)、人類の発展」。水が人類の生活や経済、自然環境に果たす役割の大きさを考えると、ややドライな印象のタイトルかもしれません。

コカ・コーラ カンパニー(米国本社)が販売するほとんどの製品で最も多く使われる原料は、言うまでもなく水です。そのため、当社はこれまで10年以上にわたって水の管理・保全計画を実行しており、「世界水週間」でも先進的な企業の一つとして活動や方針を発信してきました。たとえば、3年連続で、製品とその製造に使用された量と同等量の水をコミュニティーや自然環境に還元しました。また、280を超えるプロジェクトで、合計2,490億リットルに及ぶ量の水の浄化や保全を実施しています。

しかし、世界中の人々が安全に水を使用できるようになるまでには、まだまだやらなければならないことがたくさんあります。2018年の「世界水週間」は、世界中の成功事例を知り、その上でコカ・コーラ社が強化すべき活動や、企業としてどのように水問題に向き合っていくべきかを考えるための、新たな視点を数多くもたらしてくれる貴重な機会となりました。

それでは、今年の「世界水週間」で特に関心の集まった五つの重要テーマを、以下にご紹介します。

 

■その1:新しい水管理基準を導入

世界自然保護基金WWF)は、水の安全とエコシステムの保護に関する最先端の知見を提供してくれる団体です。今年、WWFは企業に対し、責任ある水の使用を推進する世界的な組織「Alliance for Water Stewardship(AWS)」が新たに策定した水管理基準を導入するよう呼びかけました。この管理基準は、企業が効果的な水管理計画を策定するために活用される枠組みです。

コカ・コーラ社では長年にわたりWWFと協力関係を続けており、世界各地の河口地域を中心とするコミュニティーの健康・衛生環境の改善に取り組んできました。大規模なプロジェクトがカリブ海沿岸と揚子江流域で実施されているほか、北米、欧州、ベトナム、オーストラリアの各地でも多くの活動を行なっています。

 

■その2:安全な水の提供が女性とコミュニティーを救う

安全な水や衛生設備へのアクセスを欠く生活環境は、特に女性に甚大な影響をもたらします。女性たちは1日何時間もかけて水を運ぶことを強いられ、学校に行く機会や収入を得るための仕事の機会を失ってしまうだけでなく、過酷な労働によって自身の生命や健康がリスクにさらされることも珍しくありません。このことがコミュニティー全体の発展を妨げているという波及的な影響も、調査によって報告されています。

コカ・コーラ社が主導するプロジェクト「RAIN」は、2020年までにアフリカ全土で、少なくとも600万人が安全な水を持続的に確保できるようにすることを目指しています。2017年末時点で、このプロジェクトを通して安全な飲料水の提供を受けた人は280万人以上。また、アフリカ39ヵ国の2,000以上のコミュニティーで、衛生的な水道やトイレの供給を支援しています。

 

■その3:.水管理における「温故知新」

私たちの先祖がどのようにして水を管理し、持続的な水資源を確保してきたかを知ることで、現在の課題解決につながるアイデアが得られることもあります。コカ・コーラ社は水管理の国際的な組織「グローバル・ウォーター・パートナーシップ(GWP)」地中海支部と10年にわたりパートナーシップを築いており、キプロス、ギリシャ、マルタ、シチリアの40近くのコミュニティーで古代の雨水の活用方法や管理手法を調査し、それを時代に合わせた形で応用しています。その多くのケースで、伝統的な考え方をベースに現代のテクノロジーを活用した管理方法を確立し、活動を通して雇用の創出や若者のスキル育成も可能としました。

 

■その4:地域の事情にマッチした企業活動

水を巡る環境や社会的条件は地域によって大きく異なるため、企業も画一的な対応ではなく、状況に則した優先順位付けや目標設定が求められます。たとえば、水害のリスクが大きい地域に優先的に対応したり、企業として影響力を発揮しやすい機会を見定めることが有意義な活動につながります。そのため、各企業はその地域の水環境の改善においてはどのような機会があり、どのような対策が効果的なのかを正しく認識することが欠かせません。

WWFや世界資源研究所(WRI)が開発した水関連のリスク評価ツールは、企業がリスクの高いエリアを把握し、適切な行動を取るために役立てられることが期待されています。

コカ・コーラ社も、このようなアプローチを積極的に推進しています。コカ・コーラシステム(*)全体で水源の脆弱性評価、工場における水の効率的な利用、使用した水のコミュニティーや自然環境への還元を実施していることは、優れた点と言えるでしょう。当社は、13ヵ国で水管理の改善を支援するマルチステークホルダーのプログラム「2030年ウォーター・リソース・グループ(2030WRG)」を支持しています。また、中南米では関連会社コカ・コーラ FEMSAやパートナー団体「The Nature Conservancy(TNC)」の水基金を通して、持続可能な水供給に貢献してきました。

*原液の供給と、製品の企画開発・マーケティングを担うザ コカ・コーラ カンパニーと、製品の製造、販売などを担うボトラー社や関連会社などで構成される。

 

■その5:水管理の成果を適切に計測・評価する手法の開発

水の安全を確保するためには、インフラ整備、水処理事業、コミュニティー支援をはじめとする大規模な投資が必要です。投資のための十分な資金を集めるには、その成果を明確に示すことができなければなりません。そのため、民間や学術界などの多様なステークホルダーが協力し合い、水管理の成果を計測・評価する取り組みが盛り上がりを見せています。

国際機関や、オランダやバングラデシュをはじめとする政府は、世界銀行や2030WRGの支援を受け、水管理の評価を行う新たな手法の開発に取り組んでいます。それによって透明性の高い優れた政策や意思決定が可能となり、持続可能な水の利用を実現していくことが期待されます。

ストックホルムの「世界水週間」では、水を巡る新たな考え方の紹介、戦略的な取り組みや新たな課題の共有が行われ、幅広い知見をもたらしてくれました。これらを参考に、コカ・コーラ社は水に関する2020年のコミットメントを確定し、次なるステップとして、2030年に向けた目標設定に取り組んでいきます。

「世界水週間」に参加して感じたのは、この場に集い、議論し、協力し合って方針を決めていく人々がいるということが、何よりも大切だということでした。世界中に安全な水を届けるには、こうした人々の力が絶対に不可欠なのです。