テルアビブ(イスラエル)にある「ザ・ブリッジ」のオフィス

ザ・ブリッジ」は、コカ・コーラ社がIT起業家たちと協働して、2014年にイスラエルのテルアビブで始めたプログラムです。

その狙いは、「スタートアップ企業の革新的な技術とグローバル企業の知見をかけ合わせ、双方のビジネスを拡大させる」という野心的なもの。第3期目が終了した2017年3月までに、「ザ・ブリッジ」に参加したスタートアップ企業は30社にのぼり、第4期目となる今年のプログラムには、12社の参加が決まっています。

ザ・ブリッジ」のスポンサーは、立ち上げ当初、コカ・コーラ社のみでしたが、2015年にケーブルテレビ向け放送局のターナー・ブロードキャスティング・システムが参画。そして2017年のプログラムからは、メルセデス・ベンツ(*)が加わりました。

着々と結果を出し、スポンサーを増やしている「ザ・ブリッジ」とは、一体どのようなプログラムなのか? コカ・コーラ社メルセデス・ベンツの関係者に話を聞き、このプログラムに秘められた可能性を探りました。

*メルセデス・ベンツ:ドイツの大手自動車メーカー、ダイムラー社の傘下ブランド。高級車で知られる乗用車部門は、ダイムラー社の事業部門メルセデス・ベンツ・カーズが統括している。

文=ジェイ・モイエ

 

■スタートアップを支援するメリットとは

ザ・ブリッジ」は、選抜されたスタートアップ企業と、グローバルな事業基盤を持つスポンサー(コカ・コーラ社ターナー・ブロードキャスティング・システムメルセデス・ベンツ)が共同で進めるプログラムです。プログラムの期間は7ヵ月。その間に、スタートアップ企業はスポンサーの支援を受けながら、自分たちが開発したサービスやシステムの商業化に取り組みます。

ザ・ブリッジ」は、従来型のスタートアップ支援モデルであるインキュベーターやアクセラレーターの進化形として生まれました。従来の典型的な流れでは、インキュベーターがスタートアップ企業の初期の資金調達を、アクセラレーターが事業アイデンティティや製品コンセプトの形成を支援します。これに対し「ザ・ブリッジ」は、製品や顧客基盤がある程度形成された段階のスタートアップ企業に対象を絞り、それらの本格的な商業展開を後押しします。

動画:「ザ・ブリッジ」の紹介
(※英語のみ)

新しく「ザ・ブリッジ」のスポンサーとなったメルセデス・ベンツは、誰もが知るドイツの有名自動車ブランド。米国での販売代理店は、ザ コカ・コーラ カンパニー(米国本社)やターナー・ブロードキャスティング・システムと同じく、ジョージア州アトランタを本拠地としています。ダイムラー社の事業部門メルセデス・ベンツ・カーズで、デジタル営業・マーケティング部門のバイスプレジデントを務めるサビーン・シューナートは、「スタートアップ企業が提供するソリューションを自社環境でテスト運用することもできるこのプログラムに、大きな可能性を感じている」と語ります。

「『ザ・ブリッジ』への参画は、デジタル技術によって我々の事業変革を戦略的に進めるための一歩になると確信しています。スタートアップ企業が持つ起業家精神や既成の枠にとらわれない発想、そしてそこから生まれる斬新なイノベーションを支援することで、テクノロジーの未来を先取りし、最大限活用していきます。これにより、私たちはお客様のニーズを把握し、よりパーソナライズされた製品やサービスを提供することができるようになるでしょう」(シューナート

一方、コカ・コーラ社の新技術・イノベーション部門を率いるアラン・ボエームは、メルセデス・ベンツがスポンサーとして参画する意義を次のように語ります。「メルセデス・ベンツの歴史は、『コカ・コーラ』が発明されたのと同じ、1886年に始まります。世界最高の品質を誇る欧州ブランドを抱える企業の参画は、『ザ・ブリッジ』に新たな視点をもたらしてくれます。同社が掲げるスローガン『最善か無か』という言葉には、このプログラムへの大きな示唆があると感じています。私たちも『メルセデス・ベンツ』という一大ブランドから多くのことを学ぶことができるでしょう。さらには、彼らのネームバリューのおかげで、より多くの優秀なスタートアップ企業が集まってくるに違いありません」。

コカ・コーラ社とメルセデス・ベンツもサポートする いま、大注目の「スタートアップ支援プログラム」

ザ・ブリッジ」第4期に選出された12社のうちの1社、Retubeのメンバー

 

■目先の利益よりシナジーが大事

スタートアップ企業が「ザ・ブリッジ」に参加するための条件は、スポンサーが提示した五つのテーマ(消費者エンゲージメント、消費者向け販売、サプライチェーン、マーケティングイノベーション、健康)のいずれかで、革新につながるソフトウェアソリューションを開発していることです。選出されたスタートアップ企業は、スポンサーのアドバイスに加え、マーケティングやコミュニケーションの高度なトレーニングを受けることができます。また、スポンサーのグローバルな経営資源を存分に活用してパイロットプロジェクト(テスト事業)を走らせることや、ライセンス契約締結に向けた関係構築を進めることも可能です。そしてプログラムの最後には、アトランタのザ コカ・コーラ カンパニーにスタートアップ企業が集い、顧客候補の企業や投資家に対して自分たちの製品やサービスを売り込むのです。

ところで、「ザ・ブリッジ」が、他のスタートアップ支援プロフラムとは一線を画し、成功している理由は何でしょうか?

プログラムのゼネラルマネジャーを務めるギャビー・ツェルトクコカ・コーラ社)は、次のように説明します。「一般的に、スタートアップ企業に投資するベンチャー投資家は、その保有債権や株式の資産価値向上による利益(キャピタルゲイン)や業績成長にともなう配当金を得ることを目的としています。一方、私たちが求めているのは財務的なリターンではなく、スタートアップ企業との事業シナジーです。革新的な技術を有する企業と真の意味でのパートナーシップを結ぶことで、自社ビジネスにスピード感をもたらし、改善をもたらしたいと考えています。『ザ・ブリッジ』のスポンサーをすることで、私たちはスタートアップ企業とのベストな協業方法を考える7ヵ月を、他社に先んじて手にしているというわけです」。

コカ・コーラ社とメルセデス・ベンツもサポートする いま、大注目の「スタートアップ支援プログラム」

テルアビブの「ザ・ブリッジ」本部にて、それぞれの業界の将来見通しを共有する
コカ・コーラ社ターナー・ブロードキャスティング・システムメルセデス・ベンツの代表者

「私たちスポンサーは、スタートアップ企業の商業的な成功に必要な要素をあらゆる側面から検討し、支援を行います。たとえば、企業ストーリーの伝え方や、製品をグローバル展開していく方法をより深く理解してもらうために、コカ・コーラ社のブランド戦略やサプライチェーンについて学ぶ機会を提供します」(ツェルトク

もちろん、「ザ・ブリッジ」は単なる学習プログラムではありません。2017年3月時点で、「ザ・ブリッジ」に参加したスタートアップ企業30社とスポンサー企業(当時はコカ・コーラ社ターナー・ブロードキャスティング・システム)により、90件のパイロットプロジェクトが実施され、27のライセンス契約が締結されています。

スタートアップ企業の革新的な技術がどのような形で私たちに届けられるか、そしてメルセデス・ベンツの参画によってプログラムがどのような進化を遂げるか、今後の展開が楽しみです。