井戸で汲み上げた水を使う「ほうとう」は“本物の味”

 富山県から移動した私たちはまず、山梨県の甲府市にたどり着いた。甲府駅からまっすぐに続く武田通りを2km弱進むと突き当りにあるのが武田神社。戦国武将・武田信玄ゆかりの地とあって、訪れる人は後を絶たない。
Good Water Makes Good Food
水のおいしい地域のおいしい食べもの
武田神社で水が流れ続ける姫の井戸。向かいには武田水琴窟もあり、
耳を澄ますと小さく美しい音色が聞こえる

 境内の鳥居をくぐらずに、左手へ進むとすぐに姫の井戸(茶の湯の井戸)と、武田水琴窟(たけだすいきんくつ)がある。姫の井戸は、信玄公のご息女誕生の際に、産湯として使われたことからこの名がついたという。龍をかたどった口から水が流れ、柄杓で水を飲むことができる。この井戸からはかつて茶釜などが発掘されていて、お茶を点てる際にも日々使われていたことから茶の湯の井戸とも呼ばれている。
 豊かな水が、人々の豊かな生活に欠かせないものだということ、また数百年前と現在がしっかりとつながっていることが、リアリティをもって感じられた。

Good Water Makes Good Food
水のおいしい地域のおいしい食べもの
店一番人気の「かぼちゃほうとう」1,242円。
この他に「山のきのこほうとう」1,944円と
「猪肉ほうとう」2,052円もある

 同じ市内に『奈良田本店』(*3)はある。43年前に創業された、100人参加しての宴も可能な大きな店だ。料理は、山梨の郷土料理を出す。
 店主の今村さんは、「本物は絶対うまいから、本物だけを味わってもらいたい」との思いから、山菜、キノコ、果実酒に使う木の実、コーヒーに使う水まで自身で汲みに行ったり、採りに行ったりしている。店で使っているザル類まで自分で編んでいるのには驚いた。
 水は、この地域の地下水を大きな井戸で汲み上げたもの。ほうとうも自家製、使う甲州味噌も自家製。すべてに水を使うのだから、この土地の水がなければ、この店の味も出せないのは間違いない。