富士山の湧水が育むがごとき食べものたち

 山梨県と同じく、富士山の自然の恩恵を受ける静岡県。名店は数多くあれど、湧き水で打った蕎麦のおいしさは、瞠目に値する。そこで今回訪れたのは、富士市東部。12の地元蕎麦店が加盟する「富士山南麓そば街道」の味のレベルの高さは、きれいな水がいかに蕎麦をつくる上で重要な要素であるのかを示している。


湧き水で打った蕎麦のおいしさよ

 まず訪れたのは、昭和42年創業の『いさわや』(*5)。店主の内藤信一さんは「やっぱり打ちたてがおいしいから」と、毎朝開店直前に更科二八蕎麦を打つ。天ぷらなども注文が入ってから材料を切り調理する。
Good Water Makes Good Food
水のおいしい地域のおいしい食べもの
定番の「箱天ざる」はランチタイム1,000円、
ディナータイムになると1,080円。良心的な価格設定

 この地域の水は、富士山の湧水である滝川水道組合の水なのだそう。お茶を淹れたり、ウイスキーの水割りに使うときなどは浄水することもあるそうだが、そのままの水でも十分においしい。


流れに従う水草が美しい地元の川

 内藤さんは、このあと私たちが水のきれいなスポットへ向かうのだと知ると、開店前だったこともあって、すぐ近くの田宿川がとてもきれいだからお勧めですよと、案内してくださった。
 細い路地を進み、川に出て視界が開けた瞬間、水草の鮮やかな若草色が目に飛び込んできて驚いた。人間の生活圏に共存する川のイメージが完全に覆った。

Good Water Makes Good Food
水のおいしい地域のおいしい食べもの
水が透き通り、流れに従う水草が美しい田宿川。
是非また訪れたい、すぐにそう思える町なかの名所だ。

 田宿川は、富士山の地下水が流れる清流で、水源地は今泉湧水群によって形成されている。富士市内では至る所で湧水が流れ出て駿河湾に注ぎ込む。昭和49年から地元の住民たちによって川の清掃が行われ、現在は年6回以上の清掃活動が続いている。この町で暮らす人々の川への思いによって、水の美しさと豊富な水量は保たれているのである。