きれいな水がなければ育たないのが、わさび

 日本人の食に関係深く、水のきれいなところでしか育たない農作物としてまず思い浮かぶのは、わさび。和食には欠かせないスパイスだ。中伊豆の方ではわさびの栽培がさかんに行われていると知り、伊豆市へ向かうことになった。
 まず、天城峠一帯に広がる休養林「昭和の森」の一角にある道の駅『天城越え』に向かう。くねくねと続く細い山道の脇に、時折わさび田があった。苔の生えた石垣づくりの段々畑にわさびの葉が生い茂る。葉の成長度合いがブロックによって違うのは、順に収穫していくからだという。

Good Water Makes Good Food
水のおいしい地域のおいしい食べもの
浄蓮の滝(じょうれんのたき)に隣接するわさび田。
近くの売店や道の駅では、生わさびも売られている

 道の駅に車を停め、伊豆を代表する観光名所、浄蓮の滝へ。滝を見るまでに階段を百段ほど降りただろうか。実際に目にした滝は、さすが「日本の滝百選」だけあって美しいのはもちろんのこと、勢いよく流れる滝や川の水音が自然のBGMのようで、聞いているだけで清々しい気持ちになれた。目と耳で感じることができ、この滝の周辺にあるわさび田を見学することもできる。とても素敵な場所だった。


5秒で茹で上げる極上蕎麦

 静岡県最東端で、伊豆市のお隣・伊東市、大室山の麓に平成17年にオープンしたのが『蕎仙』(きょうせん/*6)だ。蕎麦は北海道北空地産を使用。甘皮ごと石臼で細かく挽いた粉を、熱で蕎麦の質を損なわないようにするため水で打ち、5秒で茹で上げる。そのようにして細麺の十割蕎麦が完成する。
Good Water Makes Good Food
水のおいしい地域のおいしい食べもの
「生桜えび生しらす天ぷら せいろ付き」1,600円。
天ぷらのさくっとした食感が幸せな気分にさせてくれる

 添えられたわさびは中伊豆産のもの。わさびはつけ汁に入れず、少しずつ蕎麦に乗せて食べるのが、店がお勧めする一番美味しい食べ方。天ぷらの生桜えび、生しらすは駿河湾産、椎茸も地元のものを使用している。


水のおいしいところに「おいしい食」あり

 以上、富山、山梨、静岡と、豊かな水に導かれながら各お店を巡ってきた。今回の旅を通じて、清く磨かれた美しい水が、繊細な日本食の礎となっていることを実感することができた。同時に、今回訪れたどの地域にも、地元の人々が名水を宝として尊び、大切にしてきた歴史があることもわかった。人々の丁寧な行いが、自然の恵みの味わいをより一層深めているようだ。
 水のきれいなところ、水のおいしいところにこそ「おいしい食」あり。その法則は、21世紀になった現在も、生き続けている。

[お店情報]
*1
旬彩 いろり茶屋 鮎の庄
住所:富山県砺波市上中野70
電話:0120-01-0257
営業:11:00~14:30、17:00~20:00
休:4月~10月は第二・第四木曜日、11月~3月は毎週木曜日

*2
いわな
住所:富山県南砺市西赤尾町72-1 道の駅 上平 ささら館
電話:0763-67-3267
営業:11:00~21:00
休:火曜日 

*3
奈良田本店
住所:山梨県甲府市国母22-12
電話:0552-26-0911
営業:11:30~14:30/17:00~22:00(金土~22:30)
休:火曜日

*4
井筒屋
住所:山梨県北杜市小淵沢町1035
電話: 0551-36-5990
営業:11:00~14:00、17:00~20:00
休:火曜日(祝日の場合翌日が休業)

*5
いさわや
住所:静岡県富士市比奈913
電話:0545-34-0084
営業:11:00~14:00、17:00~21:00
休:火曜日・第三水曜日

*6
蕎麦処 蕎仙
住所:静岡県伊東市十足329-6
電話:0557-45-6681
営業:11:00~15:00
不定休

※記事内メニューの価格はすべて税込み表示です。