「ここのケーキ、美味しいよね。ほら、伊勢丹の地下とかで売ってる、パティシエ名がブランドになってるようなものに比べたら、オシャレさが足りないだけじゃない?」

「そう、ほんとうに、そうなんですよ!」
 とても真剣な顔つきで頷いたタクミが、
「でも、私はね、実は大好きなの、ここのケーキ……」
 カスミが言い終わる前に、突然、キスで、唇を塞がれた。
 チュッと、とても、軽いキスだった。それなのに、タクミの唇の柔らかな感触が、いつまでも唇から離れない。
「あ、ごめんなさい。つい」
 ポワンと放心状態のカスミに、タクミが詫びる。
「う、ううん」
カスミさんの言葉、すっごい、嬉しかったから、つい」
「え?」
「その、ケーキ美味しいって言ってもらえて、すごく嬉しくて、あの」
「え? ケーキ?」
「うん。あの••••••」
 バイト先のケーキを褒められて嬉しくてつい、というのはさすがに無理がある、とキスの余韻でとろけた頭で、でも努めて冷静にカスミは考える。
 愛の、告白がくるのではないか。そう読んで、間違いない空気の流れだ。もうこの際、フリーターの彼氏、でもいいかもしれない。いや、もうそれで良い。絶対につき合う。答えは迷いなくイエス! 
 カスミが息を殺して待っていると、意外な言葉がタクミの口からこぼれ落ちる。
「••••••3代目なんですよ」
「?」
 まっさきに、J SOUL BROTHERSが頭に浮んだカスミの隣で、タクミが続ける。