健やかで豊かな日本の未来を築くために。健康づくりは、町づくり、人づくり。

日本全体の健康レベルを上げる。
新たな集団戦略的健康づくりに挑戦。

「今の日本は、明治維新、第二次世界大戦からの復興に続く、第三の維新のさなかにあります」と言うのは、早稲田大学スポーツ科学学術院の荒尾孝教授。“第三の維新”とは、世界に類を見ない超高齢社会への変革のこと。「日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入します。日本がどういう社会をつくるのか、世界中から注目されていますから、世界の手本になるようなモデルをつくらなければなりません」。健やかで豊かな超高齢社会を築くことをテーマに掲げ、研究を続けている。
「従来の健康づくりは二次予防でした。健診をしてリスクのある人は医療機関で改善するような。私も以前は地域や企業で、そういう活動をしてきました」。ところが、この方法では、全体的な健康レベルを上げることはできず、医療費負担がかさむばかり。「二次予防に関わってきたからこそ、その方法では超高齢社会を生きるのは難しいと気づきました。“健康日本21”の策定検討会委員として関わったことも大きなきっかけでした」。
「われわれは実学ですから、直接人の健康に役立ちたい、という思いが強いんです」と、医学博士でもある荒尾教授。地域全体、日本全体の健康レベルを底上げできるような新しい健康づくりの取り組みとして、“集団戦略的健康づくり”に挑戦している。

健康と環境がマッチした町づくりへの願い。
「産官学の連携、行政や住民の参画に加え、
企業が持つ資源を健康づくりに活かしてほしい」

"集団戦略的健康づくり"とは、"健康な町づくり"であると荒尾教授。今は年配の方でも健康が続くかぎり、家に閉じこもらず、外に出て地域の中で役割を果たすことが望ましい時代。それが高齢になっても健康的な生活を送る秘訣にもなる。「高齢者が最期を迎える直前まで、自己実現を求められるような社会をつくりたい。それには個人の能力も必要だけど、環境も重要です」。
言い換えれば、高齢者の生き方が地域全体の質を大きく決定することにもなる。「新しい高齢者の文化をつくらなければ、超高齢社会を乗り切ることはできません。健康と環境がうまくマッチした町をモデルとして一つでもつくりたいと、研究者として願っています」。
荒尾教授の活動は、地方自治体と協力して、町ぐるみ、地域ぐるみの健康づくりの実践が中心だ。「行政が一方的に進めるのではなく、計画づくりの段階から住民が参加して役割分担をしてもらいます」。行政は予算や設備等のハードを提供し、住民は知恵や労力、アイデアを出す。「健康づくりは住民が実践してくれなければ実現できません。自分たちが計画づくりから関われば、その後も継続して実践してくれるでしょう」。
また、企業の役割も重要だと荒尾教授。「これまで、企業と地域の接点はほとんどなかったけれども、企業が持つ資源を健康づくりのために開放することもできるでしょう」。開かれた存在として地域の中で役割を果たしていけるはずだと言う。「企業活動がおよぼす影響に真摯に目を向け、解決する姿勢を持つことが、成熟した企業のあり方だと思います」。

健康づくりは“人づくり”から。
若き研究者の活躍にも期待。

こういった活動は公衆衛生学を中心に、さまざまな分野のノウハウが欠かせない。「健康づくりは“人づくり”なんです」。
新しい住民と行政のパートナーシップをつくるためには、行政、住民の中にも、それを担える人材を育てなければならない。「私が考えているのは、高齢者を“人財”として、地域の中で活用できるようなシステムです」。それが究極の健康づくりだと言う。「定年退職から間もない人は特に貴重な人財、宝です。こういった面でも企業と協力することが出来たらと、いつも思っています」。
荒尾教授の研究室には、さまざまな専門分野を研究しながら、健康な町づくりを目指す若き研究者たちが集まっている。中国からの留学生は「荒尾教授のもとで勉強したことを中国でも活かしていきたい」と抱負を語る。荒尾教授は言う。「日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しますが、一人っ子政策をとっている中国は、近い将来、日本どころではない人口のひずみが必ず出てきます。国際的な問題として中国に注目しています」。
計画から実践、そして結果を得るまでに、長い時間がかかる健康づくりだからこそ、「早くみんなに偉くなってもらって、この分野の研究者を育てるような人になってほしい。僕一人では限界がありますから」。世界から注目を集める超高齢社会への、維新の礎となる若き志士たちの活躍に期待を込めて、そう締めくくった。

「コカ・コーラ サスティナビリティーレポート2013」より

健康日本21