ライムの入ったグラスに注がれるドリンクと、車が蛇行するイラスト

飲酒運転

お酒がもたらす運転への影響

「飲んだら乗るな。乗るなら飲むな」よく耳にする言葉です。お酒はたとえ少量でも心身に様々な影響を与え、取り返しのつかない事故を引き起こしてしまいます。
(1) 動体視力が落ち、視野が狭くなります。そのため信号の変化や路上の人や他の車の動きの見極めが遅れます。
(2) 抑制が効かず理性が失われる状態になるため、運転に必要な判断力が低下。スピードの出しすぎに気づかなかったり、ハンドルさばきが乱暴になったりします。
(3) 集中力が鈍っているため、状況変化に対しとっさな対応ができなくなります。
(4) 運動をつかさどる神経が麻痺しているため、ハンドル操作やブレーキ動作が遅れがちになります。
(5) 体の平衡感覚が乱れているため、直進運転できず蛇行運転をしたりします。これが信号無視、カーブを曲がりきれない、歩行者の見落とし、ハンドル操作の誤り、ガードレールや電柱への衝突など悲惨な事故につながってしまいます。

お酒の酔いはすぐには回りません

お酒を飲んでも、すぐに酔うわけではありません。アルコールは胃や小腸から吸収され血液に入り、循環して脳に到達するまでに数十分かかります(食べ物を一緒に取ると、アルコールの吸収にはさらに時間がかかります)。そのため飲んだ直後は酔った兆候が出ませんが、そこで「酔ってはいない」「ぜんぜん大丈夫」と勘違いしてはダメ。後に必ず酔いが回ってきます。

酔ったときの感覚はあてにならない

「つい飲酒運転してしまった」原因の一つに、自分では意識が正常だと思い込んでいたということがあります。しかし、自分では正常のつもりでも、アルコールによって判断力や運動能力は確実に低下。また、飲酒を続けるうちに出てくる「急性耐性」というアルコール作用への慣れにも注意が必要です。下のグラフは、点滴で血液中のアルコール濃度を一定に保ちながら、被験者に「酔いの症状」を主観的に判断してもらった測定結果。時間が経つにつれ酔いの自覚症状が薄れていくことがわかります。
地方都市ではバスや電車で行きづらい立地のお店も少なくありませんが、飲酒をしてしまいそうなときは車では出かけず、必ずタクシーなどを利用、あるいは事前に代行運転の手配をしてから出かけましょう。

血中アルコール濃度と酔いの感覚の関係グラフ

アルコールの代謝には時間がかかります

前の晩に深酒し、翌朝に酒気帯び運転で事故を起こし逮捕されたケースがあります。お酒を飲んだ後、酔いが醒めるまでには一定の時間が必要。体重約60kgの成人男性では1単位(ビール中びん1本、日本酒1合、焼酎0.6合程度)のアルコールが体内から消えるまでに約3~4時間、2単位では約6~7時間、3単位では約9~10時間、4単位では約12~13時間かかります(これはあくまで目安。体格・体質などで異なります。また一般的に女性はこの数値以上に代謝時間がかかります)。例えば深夜までの飲酒で3~4単位のアルコールが体内に残っている場合、抜けるまでには約9~13時間、つまり翌日の午前中はまだお酒が抜けていないことになります。お酒を飲み過ぎた翌日は運転してはいけません。
下のグラフはお酒に強い中年男性がビール350mlを1~2本飲んだ場合の血中アルコール濃度の変化を示したもの。アルコールが体内から消えるまでの時間は約3~4時間となっていますが、代謝時間には個人差があるため、何時間経過すればアルコールが抜けるかは一概には言えません。たとえ「飲んでからもう3時間経ったし…」というような場合でも、お酒を飲んだ当日は運転を避けるべきでしょう。

飲酒量と血中アルコール濃度の関係

またアルコールは肝臓で約90%代謝され、残りの約10%は呼気や汗、尿として排出されます。この割合は変わらず、入浴や運動でたくさん汗をかいたからといって10%以上のアルコールが排出されることはなく、代謝時間を待つしかありません。

わずかでも危険――酒気帯び運転の基準値

道路交通法では、呼気1リットル中0.15mg以上アルコールを検知した場合「酒気帯び運転」としています。これはどのくらいでしょう? 例えば1単位を飲酒したときの血中アルコール濃度0.02~0.04%は、呼気1リットル中のアルコール量に換算すると0.1~0.2mgに相当。つまり1単位を飲んだだけで「酒気帯び運転」の基準値を超えることになります。この数値は個人差が大きいこともあり、一杯でも飲んだら運転は厳禁です。
また、実際には血中アルコール濃度が上記以下の0.015%(呼気1リットル中0.07mg)でも、複数のことに同時に注意を払う場合のような脳機能に影響することがわかっています。すなわち、車を運転する時に必要不可欠な、前方・後方の状況を同時に把握する能力が損なわれている状態。取り締まりがあるからではなく、「酒気帯び運転」は医学的にも危険な状態とみなされるのです。

飲酒運転と交通事故・死亡者数

飲酒運転は、法律(道路交通法)で禁止されているにもかかわらず後を絶ちません。道路交通法改正による厳罰化や、飲酒運転根絶に対する社会的機運の高まりによってその数は減少を続けているものの、2020年における飲酒運転を原因とする事故件数は2,522件、うち死亡事故は159件に上っています(警察庁資料より)。ほろ酔い期(血中アルコール濃度0.05%以上)の運転で交通事故の可能性は2倍に。つまりアルコール1単位(ビール中びん1本、日本酒1合、焼酎0.6合程度)の摂取で事故の可能性は倍増してしまうのです。

[飲酒運転取り締まり基準
酒酔い運転:
アルコール濃度の検知値に関係なく、まっすぐ歩けないなど、酔った状態で運転すること。

酒気帯び運転:
酒に酔った状態でなくても、一定基準以上のアルコールを体内に保有して運転すること。

酒酔い運転と酒気帯び運転の場合の交通違反処分表

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